人見知りも90日で改善できる


前回の記事「悩み相談が有効な理由」では、他人に相談することが自分のメンタル改善に非常に有効であり、同時に相手のためにもなることをお伝えしました。

しかし、メンタル不調に悩む方の大半は、そもそも対人緊張が強く、人を信頼しにくいという人も多いはずです。

「あいさつや事務連絡的な接触でさえようやくやっているのに、腹を割って悩みを話すなんて、とんでもない!」
と拒否感が湧いてきてしまう人も多いことでしょう。

私もかつては、その1人でした。
特に思春期から20歳代までは、2~3人の人を除き、親しくすることができませんでした。

小学生時には担任教師にもなじめず、1年近く経ってようやくある程度親しんできたところでクラス替えとなってしまうのが苦痛で仕方ありませんでした。

また、数人の「班」を作って何かをするなどという場面がことのほか嫌で、他のクラスメイトらが仲良しの子たちとすぐにくっついて楽しそうにしている中、

「どこの班に入ればいいんだろう」
「あの子たちに頼んでみようかな。
 あ、もう定員になっちゃった」

などと思ってウロウロしているうちに余り者になり、他に何人かいる余り者同士で仕方なく組む。しかしそもそも親密度がないから、いっしょにいてもギクシャク・・・といったありさまで、相当苦痛でした。

そんなわけで、グループ活動の究極である「修学旅行」なんて気が重いイベントに過ぎず、当時もしも選択肢があったなら喜んで家で休んで過ごしていたと思います。

大学生になってからさえも、(医学部であると同時に自衛官を要請する学校だったので)定期的に回ってくる「3分間学生講話」で話すとか、
数十人の前で自衛官としての訓練として号令かけや「自衛隊体操」の指導をするのが、嫌で嫌でしょうがなく、そのストレスが、休学するほどのうつ状態になった要因の一つでもありました。

これほど対人緊張が激しかった私が、なぜ改善できたかという要因はいくつかありますが、その大きなものの一つが
「社会的役割を持つこと」
だったのです。

一言で言えば、仕事上の役割を与えられたことです。
(もちろん主婦の人なら主婦としての役割、e.t.c. で同様に考えていただければOKです)

例えば、医師になって最初の仕事が、自分の指導医と共に、見習いの立場で患者さんの担当をすることになります。

診断も治療も、薬の選定も処方も全て主治医である指導医がしますが、研修医はそれを毎日ついてまわって観察し、覚えていきます。

主治医は責任が大きく、忙しいので、研修医は日々の雑務で簡単だが繰り返しが必要なものや面倒なものを分担します。
毎日のようにある、点滴や注射が、その典型的なものです。

診察も、特に入院患者の場合は、基本的に毎日朝晩回診します。
主治医が外来や手術などで一緒にいられない場合は研修医単独で自分なりに患者さんを観察し、聴診器を当てたり、お腹を触ったり(触診)したり。
(もちろん、不明点はすぐに指導医に相談します)

で、そうやって回診や点滴をしに患者さんたちの枕元を回るのですが、毎日繰り返すうちに、お互いなじんできます。

まあ、当たり前といえば当たり前だし、そもそも患者さんは健康状態を良くしてもらうために病院に入院しているので、基本的に医師を信頼し頼ってくださいます。

私は対人緊張が強く人見知りが激しかったですが、一方で過剰なほど生真面目だったので、気が進まなくても医師としての責任上、毎日複数回患者さんに会いに行き、必要な声掛けをし、診察や処置をする・・・というのは迷うことなく続けることになりました。

そのおかげで過去の人間関係(友人やクラスメイト、近所付き合いなど)とは一味違った形で、親密性を増すことができたのです。

↑研修医1年目。担当した患者さんが退院時「記念に撮らせて」といわれて撮影。

もちろん仕事上の関係ですから、ごく狭い範囲の関わりとなります。
でもそうした制限があるからこそ、その枠内では結構オープンに患者さんたちと話すことができ、それが自分自身の自信にも繋がり始めたのでした。

逆にいうと、医師としての仕事を離れた途端、同じ患者さん相手でもかなり緊張する・・・というのは、10年くらい前までは続いていたかと思います。

例えば患者さんとたまたま電車やお店の中でばったり会ったりしたとき、世間話をするのはかなり緊張し、早く遠ざかりたいと思ったものです。

それでも、仕事上の役割で得た安心感があるので、20代までよりもずっと楽なものでした。

というわけで、対人関係が苦手な人は、自分の社会的役割の部分でだけ、まず他人と関われば良い、と割り切ると、緊張度がやわらぎます。

「いや、別に自分は専門職じゃないし、そんなたいした知識や役割もないから・・・」
と思う方もおられるかもしれませんが、「役割」は何でも良いのです。

例えば

・趣味の同好会で定期的に人に会う、そこで誰かにその分野のことを相談されたら答える

・SNSで、自分の好きな分野のコミュニティに参加し、共感できる投稿者には「いいね」ボタン押したりコメント入れる

・自身でブログに、好きな分野のことを書き込んで発信し続ける

こうした中で、少しずつあなたと気が合う人が出てくるでしょう。

昔見ていた統合失調症の患者さんで、趣味が俳句という方がおられました。

統合失調症という病気の性質上、ことのほか他人の言動に過敏で、対人関係に恐怖感を覚えやすいのですが、
その方は月1回の句会参加だけは欠かさず、マイペースで作句し続け、独自の持ち味で句会メンバーに受け入れられていました。

ある年には、大手新聞社の「読者投稿の俳句年間最優秀賞」に顔写真付きで掲載されたこともあり、感慨深くその記事を読んだものです。

心理療法で「対人関係療法(IPT)」というものがあります。
その基本的考えを一言でまとめると
「人間関係の親密度にランク付けをし、最重要なものだけ重視せよ」
というものです。

最も大切な人間関係(親、子供、伴侶、恋人、親友)
→まあまあ親しい関係(友人、毎日顔を合わせる同僚や上司・部下など)
→顔見知り(近所、いつもいく施設や店の顔なじみなど)
→ゆきずりの人

と進むにつれて親密度が減るので、それに合わせて重要度も落とし、精神的エネルギーを重要な人間関係中心に使おう、というもの。

その結果として、例えば電車の中でたまたま人に嫌な言動をされた場合にも引きずらない、といったこともできるようになります。

もちろん、最初から思ったとおりにはいきません。
でもこれまでとは違う考え方、視点の持ち方をまず知識として知り、学んだら、あとは毎日その知識に基づいて繰り返し練習するしかありません。

英語など語学でも、テニスなどスポーツでも、筋トレでも、最初はすぐ忘れる、間違える、疲れる・・・などで、断念したくなる日も多いことでしょう。

ただ、人間の脳の性質として、新たな習慣(新たな考え方や価値観も含みます)が自分に根付く、言い換えれば「上書き」されるには、平均90日かかるといわれています。

英語上達でも、筋トレでも、あるいはダイエットなどでも、新たな習慣が目に見える成果として実感でき始めるのは、3ヶ月程度経ってからではないでしょうか?

ところが「心」のこととなると、なぜか多くの人は1回あるいは数回試してみて変化を感じないと「効果がない」「ムダだ」と、諦めてしまいます。

すると、旧来のネガティブで不安・緊張・落ち込みを招くような思考法、観点にとどまったまま。

これでは、どんなに素晴らしいカウンセリングスキルやヒーリングセラピーを教えてもらい、受けたところで、自分で使えるようにはなりません。

「そんな、何ヶ月も練習や訓練なんて、しんどくてできない」
といいたくなるかもしれませんが、あなたのその精神的苦痛はもう何年にもわたり、続いてきたのではないですか?

ここで本腰を入れて自分の旧来の思考習慣を「上書き」しない限り、今後の寿命と推定される数十年を、同じように苦痛の中で過ごすことになるのではありませんか?

そう考えれば、ここで数ヶ月、本気になって自分を変えていくことを最優先にすることが、結局は最も楽に、楽しく生きられるようになる最短距離なのです。

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ホリスティック(※)精神科医として、できるだけ薬を使わずメンタル改善する方法を様々に模索し、相談者にご提供してきました。このブログではその中でも特にアート(特に絵画療法)のエッセンスを通じてあなたが自己ヒーリングできるように工夫した情報を発信していきます。 ーーーーー ※ホリスティック:「統合的、総合的な」という意味。ここでは薬物療法オンリーの従来型精神医学の限界を突破するために深層心理学、催眠療法(ヒプノセラピー)その他のスピリチュアル、アロマセラピー、そして精神症状を改善するエビデンスのある分子整合(オーソモレキュラー)栄養療法を通じてメンタル不調を改善することを指します。