メンタル不調に悩む多くの人の相談に乗っていますが、
最も多い悩みが落ち込み(うつ)、不眠、そして
各種タイプの不安障害です。
典型例が
・パニック障害
・社交不安障害
・強迫性障害
ですね。
パニック障害を含む不安障害への基本的
考え方については
「パニック障害の本質的治療とは」
で述べていますが、
今回はパニック障害について
ある程度自己理解し、自分で対処できるための
基本ステップをお伝えしていきたいと思います。
パニック障害改善には、症状を
正しく理解することがスタート地点
ある日の通勤電車で突然、動悸がし、
息苦しくなり、手足がしびれ、気が遠くなる・・・。
怖いですよね。
何とか次の駅まで耐え、途中下車しホームのベンチで休む。
少しましになったので何とか再び電車に乗って出勤はしたが
その後もどうも調子悪い・・・。
あるいは、しばらく休んでも良くならないので
救急車を呼び、病院受診したが
到着した時には既に症状が消えており
心電図など検査でも「異常なし」となり、帰される。
・・・というのが、パニック障害の初発時の
典型的経過です。
表面に出ている症状が身体症状なので
内科的(身体的)病気を疑い、
受診するのは自然なこと。
しかしこれを2-3回繰り返して、同じ
経過をたどるなら、そろそろ自分側の
捉え方と対処法を変えるべき時期です。
つまりパニック障害の本質は、不安という精神症状が
動悸をはじめとする身体症状に置き換わって
現れているものであり、要するに
「身体症状の仮面をかぶった精神症状」
なので、本質である精神すなわち自身の
深い心理状態を直視し、理解し、解きほぐせる
ようになるまでは、症状はなくならない、
ということを意味します。
しかし自身の心に向き合うのに抵抗がある人も多く
(まあだからこそ直接的な精神症状でなく
本人にとってもっと注目しやすい身体症状として
症状が出たわけなのですが)、
特に初期のうちは、こちらが助言しても
なかなかカウンセリングを受けたり
一般向けの心理関係の書籍や動画で
勉強しようという気になれず、
「もっと詳しい検査(身体の)をしてほしい」
「症状がなくなる薬がほしい」
と、あちこちの医療機関をドクターショッピング
する人も少なくありません。
確かに、
「症状をきたすに至った、心理的ストレスを見つけ出そう」
と思っても、最初は特に何も思い浮かばない、
という場合も少なくありません。
中には
・仕事が多忙すぎて残業続き、短時間睡眠が常態化している
・上司や同僚でストレスを与えてくる人がいる
・がんばってきたのに、出世コースから外れてしまった
・子供が独立し、生きがいを失ってしまった
といった、わかりやすい要因がすぐに見つかる
場合もあります。
しかし一方で
・これといって生活も仕事上の変化もない
・特別に恵まれてはいないが、ひどく
困窮しているわけでもなく、
人並みのレベルの生活ができている
・周りの人達ともそれなりにやれている
と主張される人もいます。
しかしそうした人たちも、
よくよく話を聞いていくと
・この仕事や社会的役割に疑問を感じている
・周りの人達と波風を立てないように自己主張を抑え、
いつも他人を優先し、我慢しがちである
・周囲に批判されないようにと、本当にやりたいことをしていない
・自分は無力で、大した価値がないと思う
こうした感覚/感情を長年もって暮らしていると
人生ステージ上で何かちょっとしたことでも
きっかけが加わったタイミングで
パニック障害が発症することがあります。
それゆえ、自己の内面に向き合い、深堀りするには
まずは自分の生きてきた歴史を詳しく書き出していく
ことが第一歩となります。
ちょうど自伝を書く時のように、
どこで、どんな環境で、どんな両親のもとで生まれ
兄弟との関係はどうだったか、
幼稚園(保育園)~最終学歴の学校までの
それぞれの生活ぶり、それぞれの学校の気風、
クラスメイトや教師との人間関係の思い出、
得意だった科目、不得意な分野、
入学・進学・卒業・転居など人生畳の区切りと
なるようなイベントをどう体験したか、
父・母・祖父・祖母それぞれの性格や
あなたとの相性は?
楽しかったこと、悲しかったこと、
悔しかったこと、後悔していること、
罪悪感を引きずっていること、
今でも恨んでいること e.t.c.
思いつくままにランダムで良いので
書き出していきましょう。
特に両親との関係は、その後の
すべての人間関係の雛形となり
また、両親をはじめとして
身近な人にいわれた言葉で
自己価値観が刷り込まれるので、
例えばもしも自分は「〇〇が苦手だ」と
感じているなら、いつからそうなのか、
どんな体験でそう思うに至ったのか、
それとも実体験というよりは親にくりかえし
「お前は〇〇ができない」といわれたから
そう信じるようになったのだろうか?
など、書き出した上で、
成人した現時点のあなたから
冷静に検討してみてください。
子供の頃にインプットされた価値観や
因果関係は、後に改めて検討し直すまでは、
それが「既成事実」として一生、あなたを
前提条件として支配します。
しかし大人になり、ある程度社会経験を
積んでからその記憶(事象)を振り返ると
「あれ?それは違うよね。
その時、父親が自分を批判したのは
自分がダメだったというよりも、
父親がむしゃくしゃしていて、
自分に八つ当たりしたに過ぎなかったじゃん」
と、見えてきたりします。
こうしてニュートラルな視点で
理解し直すことができる記憶が増えれば増えるほど
あなたの肩の荷が降り
「何だ、自分ってそんなに悪くなかった。
それよりも、大人に見えていた親も
結構未熟で、感情のままに言動していたんだな。
あまり真に受ける必要ないな」
と、気が楽になっていくでしょう。
そのためにも、この
「自己の内面に取り組む」ワークは
最重要なので、しっかり行ないましょう。
最初のうちは気が重かったり、
取り組む前よりも
もっと落ち込みやイライラや絶望感が
強まったりすることがありますが、
これは「悪化」ではなく、
内面の掃除が進み始めた証拠であり、
やがて軽減していきます。
これは喩えていえば、汚れがこびりついた
鍋を強力な洗剤をつけたタワシでゴシゴシ
洗い始めたときと似ています。
洗い始めると、手をつける前よりも
しばらくは もっとひどく水が汚れて見えますが
続けていくうちに徐々にきれいになります。
あるいはこう例えることもできるでしょう。
食中毒を起こして気持ち悪くなった時には、
全部吐く必要がありますよね?
吐き始めた時に「わあ汚い、気持ち悪い」
と途中で止めると気持ち悪さが続き、解決しないですし、
原因菌が胃腸の中にまだ留まって
いる状態なので治りません。
同じように、自己の内面に向き合い、書き出すワークは
「もう、何も書くことがない」となるまで
とことん書き出す必要があります。
特に最初のうちは、慣れないので、
まだまだ溜まっているのに
「もう出ない」と思うかもしれません。
しかし休み休みで良いので、
本当に何もなくなるまで
吐き出し(書き出し)続けましょう。
本当に出し切ったかどうかは、自分が
どの程度スッキリしたかでわかります。
もちろん、1度でゼロにまではできないでしょうが、
その日に出し切れる限界まで出したと思える頃には
何十%からは楽になっているはず。
このワークは1度では済まないので、
1回につき数十分~1,2時間かけて
じっくり書き出しましょう。
最初は人生上のエピソードはかなり忘れて
いても、他を書いているうちに芋づる式に
他の記憶も出てくることが多いので、
それらもすべて書き出していきます。
あとはその後も数時間~数日ごと、
そして何か思い出す度に追加で書き(吐き)出す
ようにすると、どんどん
楽になっていくことでしょう。
<!(注)! >
中には人生の大半、数十年にわたり
あまりにも強力に自身の感情や記憶を抑圧してきたために
ワークに取り組むと頭痛や吐き気、めまい、肩こりといった
(これも)身体症状や、落ち込みや不安、イライラといった
精神症状がひどくなる場合もありますが、
これも汚れを浄化するための正常なプロセスです。
ただし、あまりにもこれらの症状が強く、辛ければ
1回あたりのワークに取り組む時間や頻度を
最初のうちは減らしても構いません。
しかし全く中断してしまうと元の木阿弥なので、
毎週複数回、最低でも数分ずつは続けましょう。
行動療法の基本方針
自己の内面を直視し、棚卸しして
理解がある程度進んできたら
いよいよ段階的自己訓練(=行動療法)をしていきます。
これにより、パニック障害のせいで支障をきたしている
行動(典型例が通勤電車に乗る、など)を
またスムーズにできるようになります。
行動療法については、次回の記事で書きますが、
その本質を一言で先取りすると、
以下の内容になります:
・治療ゴールは症状をなくすことではなく、
症状があってもそれと折り合いながら
目の前の必要な行動(電車に乗る、仕事にいくe.t.c. )
をできるようになること。
・身体症状はあくまでも
心理ストレスの転換症状であり、
身体症状そのもので死ぬことはないことを思い出す。
・身体症状が強まった時には、
心理ストレス対処法が
なおざりになったからだと認め、再度
自身の内面にしっかり取り組むこと。
ホリスティック(※)精神科医として、できるだけ薬を使わずメンタル改善する方法を様々に模索し、相談者にご提供してきました。このブログではその中でも特にアート(特に絵画療法)のエッセンスを通じてあなたが自己ヒーリングできるように工夫した情報を発信していきます。
ーーーーー
※ホリスティック:「統合的、総合的な」という意味。ここでは薬物療法オンリーの従来型精神医学の限界を突破するために深層心理学、催眠療法(ヒプノセラピー)その他のスピリチュアル、アロマセラピー、そして精神症状を改善するエビデンスのある分子整合(オーソモレキュラー)栄養療法を通じてメンタル不調を改善することを指します。
コメントを残す