前回書いた記事「認知行動療法やカウンセリングを受けても改善しない人が多い理由」では、年単位でカウンセリングを受けた人でも無自覚に中断するとそのスキルを忘れ、もとのネガティブな自分に戻ってしまうことをお伝えしました。
この例の患者さんはもう1つ、もったいない誤解をしておられました。
ここ数年、「自分で意識的にリラックスすること(リラクゼーション)」「瞑想(マインドフルネスを含む)」がメディアでよく取り上げられ、またグーグルやフェイスブックの目覚ましい生産性の背景にマインドフルネスもあることが知られるようになったのもあってか、一般の人でも結構取り入れて成果を挙げている人、あるいはカウンセラーに勧められて始めた人も散見するようになりました。
しかしせっかく教わり、ある程度改善を経験したことのある人さえ、しばらく遠ざかっていた後自分で思い出して再開しようとする時に、これらの手法の本質を忘れて
「上手くできない」
「効果が出ない」
と誤解し、活用できていない人が少なくありません。
上述の患者さんも、前のカウンセラーに
「毎日少しずつでも深呼吸などリラクゼーションの時間を確保するように」
と助言されていたのですが、
「会社員なので、日中一人になれない。だからリラクゼーションする環境にない」
と思い込んでいました。
しかしリラクゼーションなどの本質を理解すれば、仕事しながらであろうと、幼児を育てながらであろうと、買い物をしながらであろうと実行可能だし、効果も十分享受できるのです。
ここでは説明をわかりやすくするために、「リラクゼーション」「瞑想」「マインドフルネス」等を代表して「マインドフルネス」として説明しましょう。
マインドフルネスの本質は、今この場で自分が何を感じているかを意識的に自覚することです。
人は起きている時間の99%を、絶え間ない思考の中で生きています。
しかもその思考の99%は昨日と全く同じもので変わり映えしないだけでなく、その内容が圧倒的にネガティブな感情(怒り、恐怖、不満e.t.c. )を引き起こすネガティブな思考なので、覚醒時間の99%は自らの思考で自らを苦しめていることになります。
ネガティブ思考が強固な人はその苦しみもひどいですから、まさにこれが「この世の地獄を生きる」状態となります。
しかしそうした人であればあるほど、自分が生き地獄にいるのは「あの人、この会社、環境、災害e.t.c. のせいだ」と強く信じており、自分側にも大いに要因があることは、決して認めようとしません。
なぜなら、認めることは自分の非を自覚することであり、自分を犠牲者として位置づけ続けることができなくなり、自分の人生に責任を負わなくてはならないことを意味しますが、それだと気が重くなって耐えられそうもない、と感じるからです。
しかし実際は正反対です。
「周りで何が起きようと、自分の主観的幸福感は自分の思考や物事の見方次第で決まる」
とわかると、どんな災難がふりかかってきても、その体験の中で自分の気づきや成長を促す要素を見つけ、そこを活用して災難を切り抜けるだけでなく、災難に遭う前よりも強く、他人に対しても寛容で、自分に対しての正当な愛と評価を持てるようになり、落ち着いた気分と体調で毎日を生きていけるようになるのです。
将来のことを過剰に心配して時間と精神エネルギーの無駄遣いをしてしまうことも減っていきます。
一言でいうと、日々が安らかで、穏やかな楽しみの中で過ごせるようになるのです。
マインドフルネスを日常に手軽に取り入れる法
それではどのように日々の生活にマインドフルネスを取り入れれば効果を発揮できるでしょうか。
いくつか、お勧めの方法があります。
1)待ち時間ができる度に、自分の呼吸に集中する。
人中にいるときに目を閉じると周囲に違和感を持たれるのではとの抵抗感があるでしょうから(実際には人は他人に対して関心がなく、一瞬「あれ?」と思ったとしてもそれで終わりなのですが)、目は開けていてもかまいません。
なんとなく視線は数十センチから数メートル先を眺める程度にして特定のものは見つめないようにします。
もちろん、スマホは見ません。
というか、少しでも時間ができるとスマホを見ようとする、その依存的心理を自覚しましょう。
(もちろん火急の要件があれば別ですが、日常スマホを見る時間のの9割は不要不急ではないですか?)
待ち時間とは例えば
・電車やエレベーターがくるのを待つ
・信号が青になるのを待つ
・レジやATM、何かの窓口に並ぶ
・コールセンターなど電話をかけて、順番が回ってくるのを待つ
・授業やセミナーのために着席し、講師が話し始めるまでの間
など、毎日こまぎれにあることでしょう。
時間としては数秒から数十秒が最も多く、長くても数分程度ではないでしょうか。
そうしたとき、反射的にスマホを取り出すのではなく、マインドフルネスの練習時間だと思い出して、「スキマ時間マインドフルネス」を実行するようにします。
待ち時間は毎日ちょこちょこあるので、今までなら「また、待つのか。イライラ」
となるところを、
「お、マインドフルネスの練習時間ができた。ラッキー」
と感じられるので、待ち時間もストレスからプチ楽しみの時間に変えることができるようになるのです。
そして人間の脳の性質として、ずっと同じことを考え続けていると新たな発想も湧かないのですが、こうして日に何度も、僅かな時間ずつでも思考から感覚(代表的なのは、自分の呼吸をモニターする)に意識を向け替えることで、頭もリフレッシュし、思考にハマっていたときには気づけなかった視点に気づく、となることも少なくありません。
また、リラックスしやすくなるので物事や他人、あるいは自分に対してもイライラや不満が軽減しやすくなり、生きやすくなります。
2)慣れて来たら、応用編にトライ。
連続で3~8週間以上続けると、徐々に日常生活にマインドフルネスを取り入れることに慣れてきていることでしょう。
そうしたら、呼吸以外の感覚も活用するマインドフルネスもできるようになります。
例えば…
①音(電車、会話、音楽、動物の鳴き声、生活音e.t.c. )に集中する
②体感覚
例えば身体に服が触っている感覚、椅子にこしかけている腰や背中の感覚、キーボードを打っている時の指や腕の動きの感覚、歩く時にどの脚のどこの筋肉がどう動き、いつどこにどのような順番で接したり離れたりして一連の動きをしているのかなど。
今の気温、風があるかどうか、匂いは?
③マインドフルに食事
食事や飲み物を摂るとき、頭の中で考え事せず、食事そのものに集中する。
すなわち今何をどのように口に運び、食べようとしているのか。
どんな色?匂い?香り?
食べた時の食感、味は?
飲み込んだ後、喉のどこまでその存在をたどれるか?
より詳しく学びたい人には、
書籍『マインドフル・イーティング』もお勧めです。
④人混みをマインドフルに歩く
これもかなり実用性が高く、私もこれを活用するようになってからは、渋谷や新宿などの非常な人混みでも人とぶつかるとか、相対する相手と同じ方向に踏み出そうとして進めなくなるということもほぼなくなりました。
大きな駅やその周辺、大型ショッピングモールなど、多数の人がランダムに動こうとする中で、とっさに適切な方向を選んで歩くのは、なかなか苦労したりもします。
そんなとき、つい相対する人たちをキョロキョロ見て、彼らの歩いていきそうな進路を予想して、避けて歩こうとしますが、相手も予想しようとするので、結果的に同じ方向に踏み出してしまい、お互い進めなくなることも珍しくありません。
しかしここで、あえて相手や周囲を明確に見ず、少し半眼になるような意識で視線を視野の中心部に保ち、周辺視野はぼんやりしたままあるいていると、なんとなく進むべき方向が感覚としてわかり、しかもそれに従うと、今までよりも人にぶつからず、スムースに進めるのです。
唯一(しかも最初にちょっとだけ)驚くのが、
周辺視野から突然出てきたように感じられる人が自分の目の前をかするように横切る場合があることですが、
これも実際にぶつかったことはなく、驚くほどスムースに進んで行けます。
マインドフルネスに慣れてきたら、ぜひこれも試してみてくださいね。
ホリスティック(※)精神科医として、できるだけ薬を使わずメンタル改善する方法を様々に模索し、相談者にご提供してきました。このブログではその中でも特にアート(特に絵画療法)のエッセンスを通じてあなたが自己ヒーリングできるように工夫した情報を発信していきます。
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※ホリスティック:「統合的、総合的な」という意味。ここでは薬物療法オンリーの従来型精神医学の限界を突破するために深層心理学、催眠療法(ヒプノセラピー)その他のスピリチュアル、アロマセラピー、そして精神症状を改善するエビデンスのある分子整合(オーソモレキュラー)栄養療法を通じてメンタル不調を改善することを指します。
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