瞑想は心の「動体視力」

今、ご自分の気分はどんな状態ですか?
その理由はわかりますか?

「落ち込んでいる」
「しょっちゅう不安になる」
「気分の浮き沈みが激しい」

というのは、心療内科外来で受ける最も多い相談ですが、
なぜ落ち込みや不安を感じるのかを、はっきりと具体的に認識している人は多くありません。

確かに、初診時には比較的明確な因果関係を認識している場合も多く
「上司にパワハラを受けた」
「クライアントがクレーマーだ」
「先輩がお局状態で、誠意を示してもいじめで返される」
「長時間労働が常態化し、何度改善を相談しても聞いてくれない」
などの訴えが多いです。

しかし転職するなり、休職して時間を確保するなどしても、
その直後は良くても、数週間もすればまた同じように落ち込みや不安が強まってくる場合が大半です。

そして、その際には、不調の原因を本人に問うても、はっきりしないことがお多いのです。

「先週くらいから落ち込みがひどくなってきた」
とのことなので、その頃に生活面や仕事面、対人関係面などでの変化を確認しても「特に何もなかった」

しかし実際に落ち込みが強まった時期の前後を(手帳やスマホなどを開いて、実際に確認してもらいながら)一緒に検討していくと、例えば

・実家の母親(あるいは夫の母親など)から電話がかかってきて、ネガティブなことをいわれた
・友人からメールの返信が(何度か促しても)来ない
・勤務先の会社の経営状態が良くなく、自主退職希望者を募ると朝礼でいわれた
・子供の成績が思わしくなく、本人も進路をどうしたいのかはっきりせず、なんとなくダラダラしている

など、程度の大小があったりしつつ、時には複数分野にわたって、長引く懸案事項を抱えていたりします。

そしてその中には、すぐに対処できないもの、自分がいくら気をもんでも現実を改善できるものではなく、時の流れによって結果が出るまで待つしかないものも、少なくありません。

また、その時期に新たに何かが起こっていなくても、過去のできごとや未来にあり得る嫌なできごとを予め思い浮かべては

「●年前、自分にあんな仕打ちをした誰々は許せない」
「今後あの人に嫌がらせされたらどうしよう」
「リストラされたら路頭に迷うのでは」

等々と考え込んでしまい、今この瞬間は平和で特に問題もないのに、そこに自らストレスを持ち込んで、自分を痛めつけているのです。

このように「今、自分ではどうしようもないこと」というストレスがあるとき、それを割り切って心理的距離を置き、そこにいつまでもこだわらない人はストレスに長くつかまらず、心身の健康も維持できます。

精神状態が落ち着いているので、周囲とのコミュニケーションも良好な状態に保ちやすいです。

その結果、良い人間関係に囲まれるので、仕事面でも私生活面でも、自分が望む情報や物を手に入れやすくなり、現実的にも「成功」しやすくなる、という好循環に入ります。

「でも、心配事があったら、つい考え込んでしまうでしょう。
それは自然な反応なので、避けがたいし、仕方ない」
と思われますか?

しかし実際には、これは精神的なスキル(技術)であり、
スキルである以上は、正しい知識を学び、毎日練習すれば、誰でも上達できます。

ちょうどスポーツを学んだり、楽器を弾いたり、英語を学ぶときと同じです。

不安がわきあがってくるのは仕方ないですが、毎日、毎回、その度に、そこに浸らないように自分を訓練するのです。

そのための手法が「マインドフルネス瞑想法」
10年前と違って、現在は一般向けの書籍や動画などが多く提供されていますから、ぜひ練習して、習得してください。

そうすれば、一生使えて、自分の人生を楽な気持ちで安定して過ごせる、貴重な能力になるのですから。

2016年6月18、19日に放映されたNHKスペシャル「キラーストレス」では、
ついつい不安内容をくりかえしあれこれ考えてしまうことを「マインドワンダリング(思考のさまよい)」として紹介していますが、
慢性的にメンタル不調をきたしている人は例外なく、思考があちこちをランダムに――つまり自分がコントロールできない状態で――さまよい、振り回さされ続けている状態にあります。

そしてこれまでは学校でも家庭でも、そうした内面(精神)状態を理解するという教育が全く欠如していたので、大人のほとんども、自己の内面を把握し、コントロールする術(すべ)を持っていません。

というか、そんなスキルがあるということすら、ほとんどの人はまだ知りません。

この10年あまりをかけて、ようやく少しずつメディアも取り上げるようになったので、このことを知る人たちもわずかずつ増えてきていますが・・・。

この分野でも進んでいるアメリカでは、グーグル、フェイスブック、アマゾンなど、名だたる企業が、もう長きにわたり、マインドフルネス瞑想や意図的な気分転換を社員に推奨しています。

例えばグーグルでは、たしか1980年代から既に
「勤務時間の20%は仕事と無関係の活動をすること」と社員に義務付けているし、
マインドフルネスも社内で定期的に時間を取って、一斉に社員に行なう時間を作っている、と聞いたことがあります。

そのおかげで社員はアイディアや意欲面で行き詰まることなく、いつも新鮮な発想や行動をできる、というわけです。

特にこれらの企業は、その地位を保つために常に新しい発想力と決断力、行動力を生み出す必要があるので、瞑想なども「気のもちようだ」とか「気分転換」レベルではなく、現実的な「生産性向上手段」として必須だ、と認識されているのです。

前述の番組内では、このような企業の他、小学校や刑務所でもマインドフルネスを取り入れて成果を出していることも紹介されています。

『キラーストレス』(NHK出版新書)
では、ストレス対策法として、マインドフルネス瞑想の他に

・運動
・笑う
・コーピング(対処法)リスト100個を予め作っておく
・サポートを得る(人に相談する)
・ストレスを避ける(具体的な行動化)

も挙げていますので、ご参考に。

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ホリスティック(※)精神科医として、できるだけ薬を使わずメンタル改善する方法を様々に模索し、相談者にご提供してきました。このブログではその中でも特にアート(特に絵画療法)のエッセンスを通じてあなたが自己ヒーリングできるように工夫した情報を発信していきます。 ーーーーー ※ホリスティック:「統合的、総合的な」という意味。ここでは薬物療法オンリーの従来型精神医学の限界を突破するために深層心理学、催眠療法(ヒプノセラピー)その他のスピリチュアル、アロマセラピー、そして精神症状を改善するエビデンスのある分子整合(オーソモレキュラー)栄養療法を通じてメンタル不調を改善することを指します。