社交不安障害を自分で改善する方法

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目次

社交不安障害を改善するための視点とは

あなたは、外交的な方ですか?
それとも、人前で話すのは苦手ですか?

実際のところは、内向的でも社会的に上手く適応していくこととか
良い人間関係を作り、維持するのは別に問題ないのですが、
多くの人は
「自分は対人緊張が強いから、社会で上手くやっていけない」
と、思い込みがちです。

社交不安障害については、精神科医や心理カウンセラー、あるいは
体験者たちがそれぞれの立場からYou Tube でも発信しておられますね。

社交不安障害に効果がある2大心理療法である認知行動療法対人関係療法のうち、認知行動療法については何人かの人が説明しておられますが、
対人関係療法についてはまだあまり情報が出ていないようですので
今回の記事では主に対人関係療法からの視点で解説していきたいと思います。

社交不安障害の有病率

社交不安障害に悩む人は、世界中に多くいます。
典型的な症状としては、以下のようなものです。

・複数の人の前で話そうとすると緊張して声や手が震える、冷や汗が出る、
どもる、顔が赤くなるなどの症状が出る。
これが周囲に「みっともない」「かわいそう」などと思われているのでは
と気になってしまい、なおさら症状がひどくなる。

・二度とそんな場面に遭遇しなくて良いようにと、
人中に出ること、人前で発表せねばならないような環境を
全力で避けようとする。
その結果、友人関係も乏しく、仕事に就ける選択肢も
非常に限られてしまう。

といったことです。

その中でも日本人は、複数の他人の輪の中で自己表現する場
というものへの苦手意識が特に強いのではないでしょうか。

なぜなら、「和を持って尊し(たっとし=とうとい)となす」とか
「空気を読むべきだ」とか
「忖度(そんたく)すること、相手の気持ちを察することが良いことだ」
といった価値観が長く続いてきたため、
マイペースで自分の思うように振る舞ったり、自己表現する人が
批判されがちだったからです。

とはいえ、実際には欧米人も含めてやはり
「他人の目に自分はどう映っているか」
「みんなに好かれているだろうか」
と悩む人は多いのです。

実際、調査研究にもよりますが、社交不安障害の生涯有病率
すなわち一生のどこかで社交不安障害になった人の割合は
約13%といわれています。
うつ病の生涯有病率が7.5%なので、その1.7倍以上ということになります。

さらに注意しなければならないのは、
うつ病と違って、社交不安障害は自然経過では良くなる確率が低く
適切な対処をしないと、一生悩まされ、社会生活はもちろん
個人的な対人関係場面でも非常に支障をきたすことになりやすいのです。

また社交不安障害は初発年齢が平均13歳と若いため、
症状を自分の「性格」だと捉えている場合が多く、
治療や改善可能としらず、絶望している人がかなりおられます。

「自分の内向的で気弱な性格のせいで、人生が上手くいかない」
と感じがちなので自己評価も低く、その結果、他のメンタル疾患――
例えばうつ病、パニック障害など他の不安障害、そして
アルコール依存症なども併発しやすいです。

なので、社交不安障害は、医療的に治療可能な「病気」である、
という認識を持つことが、まず必要といえます。

社交不安障害の人の生育歴

こうした、他人がいる場面への恐怖感や不安感が
平均よりも著しく強くなってしまうのは、
育ってきた環境に大いに要因があります。

典型的なのは、親をはじめとする身近な大人たちが本人に対して
毎日のように、批判的な意見を浴びせてきたことです。

つまり、ささいな失敗でも、何かをしようとして
意思をもって行動したこととか、プロセスの中で学べたことには
何も言及せず、ただ結果論として「失敗した」「ダメだった」
と批判してきたことです。

この結果、本人の中では
「何かすると批判される、ダメ出しされる」とか、
「結果が全てで、何を目的にその行動をしたかには意味はない」
などという、結果最優先のものの見方がしみついてしまいます。

そうなると
「何かをしたところで、上手くいかなければ
身近な人からのネガティブ評価を受けて辛い思いをするだけ」
といった経験ばかり蓄積されてしまい、

「それなら、何もしない方がマシだ」
という、極めて消極的で、不安感や恐怖感ベースの
感じ方や行動方針になってしまいます。

新しいことを学び、経験し、成長することでしか
人は自信をつけることはできないので、
「結果が全て」とか「上手くいかない人は人生そのものが失敗だ」
などという価値観のもとでは、到底人生を楽しんだり、
未来に希望を抱くこともできなくなってしまうのです。

また、必ずしも明確に批判されなかった場合にも
「世間体」とか「常識」とかいう、イメージだけ巨大で恐ろしげだが
実は実態のないもので、周りの人達が
あなたを圧倒してきた、というパターンもよくあります。

例えば
「●●したら、恥ずかしいでしょう」とか、
「ほら、見てごらん。あそこのお姉さんに笑われるよ」とか
「そんなことしたら、みんなにどう思われるか」
などと言って、プレッシャーをかけてきます。

これによってあなたの自由な感情表現や、
好奇心や探究心に基づく自然な行動力をへし折ってきたのです。

きちんと「治療」しないと、人生が悪化していく

先ほども述べたように、社交不安障害は治療可能な病気です。
本人は当初はとても信じがたいことが多いのですが、
治療によって明らかに症状が改善し、人間関係も
社会的なパフォーマンスも向上していくので、
できるだけ早く取り組んだ方が良いです。

また、家族や友人や同僚といった、本人の身近な人達も、
この障害を「病気」として捉えた方が、本人への対応も
上手くいきやすいし、自分自身もイライラしたりせずに
済むようになるので、お勧めです。

例えば、一昔前にはうつ病の患者さんに
「何をぼーっとしているんだ。怠けるんじゃないよ」
とか、
「やる気なんて、気の持ちよう次第だ、甘えるな」

などと、周囲の人たちが言いがちだったのが、
うつ病が社会的に認識されるようになると

「叱咤激励や根性論は治療に対して逆効果である」、
「適切な休職期間を設けることも、
 身体の病気や障害に対してと同様に必要である」、
「定期的な医療的ケアが必要である」

と、徐々に周囲の視点も対応法も変わってきました。
そのおかげで無事に復職できる社員が実際に増えてきています。

なので、社交不安障害の人に対しても
「いちいちそんな細かいことで、何をウジウジ悩んでいるんだ、
 しょうもない」とか
「誰もあなたにそこまで注目してないって。
 もっと気楽にいこうよ」
などと言ってしまうのは逆効果です。

それよりも
「些細なことをいちいち気に病んでしまい、
 疲労困憊して大変なんだろうなあ」
とか、
「症状のせいで行きたい所にもなかなか行けなくて、
 さぞ不自由だろうなあ」
などと、本人の感じているであろう感情を想像してみてください。

身体が頑丈過ぎてほとんど風邪もひいたこともないような人に
インフルエンザで高熱を出して寝込んでいる人の辛さがわからないのと
同様に、自分がわからないものもある、ということを認めましょう。

その上で、本人には「患者としての義務と責任」もあります。
つまりそれは「社交不安障害が病気なので、それを知った以上は、
自分から医療を受けて、きちんと継続的に取り組んで治していく
ということです。

もちろん、医療機関を受診するほどではない軽度の症状なら、
動画や書籍でしかるべき情報を検索して勉強し、その情報を
毎日自分に適用して、症状コントロールをしていく必要があります。

不調があるからといって、ただ逃げたり、引きこもっていても
何も解決せず、それどころか年月が経つにつれて
状況が悪化し、改善へのハードルが高くなってしまうからです。

例えば、ティーンエイジャーが1~2年、不登校になり
実家に引きこもっていても、
直ちに悪影響は目立ってこないでしょう。

しかしこれが3年、5年、10年以上も引きこもっていると、
以下のように、次第に状況が悪化していきます。

例えば

・本来学校や職場や友人関係の中で、時にはぶつかりつつも
自分や相手について学び、成長する経験をできない。
その結果、自信もつかないどころか、劣等感が強まり、
ますます社会復帰への心理的ハードルが高まる。

・年を取ると同年代の人たちが次々と結婚したり子供を持つ、
あるいは社会的な責任と地位を手に入れていくのに対し、
自分はどれもできていないことも、劣等感を強める要因となる。

・親が年を取り、入院になったり要介護になったとき、
誰が親の世話をし、また親亡き後、収入のない自分が
どうやって1人で行きていけばよいのか?
といった、人生上の大きな課題に直面しなくてはならないが、

それまで学校や職場や仲間関係の中で、対立したり仲直りしたり
しながら身につけてくるべきだったさまざまな社会的体験を
省略してきてしまったので、こうした人生後半の大きな課題に
向き合うための気持ちのコントロール法がわからない。
 その結果、過剰に不安感や恐怖感に見舞われ、
ますます社会適応困難になってしまう。

といった、最悪のシナリオも、自分を良くするための取り組みを
長年何もしないでいると、実現してしまう可能性が高まります。

こうならないためには、気づいた時点から少しずつでも
自分で、あるいは医療や心理の専門家の助けを得ながら、
改善していくことが必須なのです。

社交不安障害の治療ゴールとは

それでは社交不安障害で目指していく方向性、治療ゴールとは
どんなものでしょうか。

それはこれまでの過去動画で他の不安障害――パニック障害や強迫性障害
の治療ゴールでも述べてきたことと同様で、
「不安症状と共存しつつ、必要な活動はできるようになること」です。

つまり、社交不安障害に伴うさまざまな不安症状――
例えば動悸がする、声や手が震える、冷や汗が出る、赤面するなど――
をなくそうとしたり、
そうした不安が高まりやすい場面を避けて通ろうとするのではなく、

不安症状は自覚しつつも、学校に行くとか出勤するとか
会議で自分の意見を述べる、会食に参加するといったことは
なんとか遂行できるようにする、ということです。

社交不安障害の人にみられがちな特徴

社交不安障害の人が上手く社会適応していくには、
先ほど述べてきたような、不適切で厳しすぎる
批判的な価値観を和らげていく必要があります。

社交不安障害の人によく見られる性質や価値観で
代表的なのは、以下のものです。

(1)適切な自己主張ができず、受動的である。
(2)怒りなどのネガティブ感情は「いけないもの」と感じて
  抑圧してしまう。
(3)対立は悪いものだと思っている。
(4)他者との適切な境界線の引き方がわからない。

以下、1つずつ解説していきますね。

(1)適切な自己主張ができず、受動的である。

客観的にみたら普通で正当な自己主張も、他人には認めるが
自分はしてはいけないと感じてしまいがちです。
このため、無理な頼まれごとを断れず、
結局欠勤したり、約束を果たせなくなります。

(2)怒りなどのネガティブ感情は
  「いけないもの」と感じて抑圧してしまう。

ほどほどに表現したり発散できないので
周りの人にナメられたり、
ある時点でいきなり怒りを爆発させてしまい、
周りから「一貫性のない、変な人」と思われてしまいます。

(3) 対立は悪いものだと思っている。

このため無理に相手に合わせて疲弊したり、
ストレートに反対できないので回りくどい表現で拒否しようとして
上手くいかず、自分も不満だし、相手にも
「理解困難な人」と思われがちです。

(4) 他者との適切な境界線の引き方がわからない。

これは相手が家族でも、友人でも、
仕事上の同僚関係などでもそうですが、
まだ信頼関係もないのに相手がプライベートなことを
やたら訊いてきても上手くかわせないとか、

自分が疲れている時や夜中など、
明らかに非常識なタイミングで相手が長々と相談をしてきても
一方的にがまんして聞いてしまう
などです。

それでいて、自分が困っているときには
相手に適切に援助を求めることができません。

このように対人関係の適切な距離感の調節法がわからないので、
「親しい人間関係がなさすぎて寂しいが、距離が近づきすぎると
土足で踏み込まれたり振り回されて疲れてしまう。
だから誰とも関係を持たない方がマシ」
といった、極端で孤立した立ち位置が続いてしまいます。

このような対人関係のあり方だと、
お互いの本当の意味での理解ができないままなので、
それは毎日が辛いですよね。

社交不安障害の人によくある不適切なコミュニケーションパターン

さらには、こうした偏った価値観が背景にあると、
以下のような不適切で極端な、とても居心地の悪い
コミュニケーションパターンになってしまいます。

あなた自身や、あなたの周囲で人間関係のトラブルが
起きがちな人が、このうちのいくつが
習慣化しているかをチェックしてみてください。

(1)自分の意図や感情を言葉で適切に表現せず、代わりに仕草や表情や行動などで伝えようとする。

例えばため息や失望の表情、ドアをバタンと閉めるなどです。
また、暴力を振るう、物に当たる、自傷行為なども同じです。
これでは相手はあなたが不機嫌なのはわかっても
その理由も、どんな改善を求められているのかも見当もつきません。

(2)わかりやすい言葉でなく、婉曲表現をする。

言葉は一応使うものの、言いたいことをストレートにいわず
皮肉やあてこすりを言ったり、嫌味を言ったり、
相手に恥や罪悪感を感じさせるような言い方をします。

(3)自分のいいたいことは相手に既に伝わっているはずとか、相手のいいたいことはわかっているという思い込みがある。

例えばあなたが、相手の言動に対して
「私がこんなに疲れていると、見ればわかるはずなのに、
どうして手伝ってくれないんだろう?
なんて冷たい、自己中な人なんだ」
とあなたが感じたとします。

しかし相手から見れば、あなたがなんだか不機嫌そうだし
今は話したくなさそうだから、しばらくそっとしておこう、
と思っている可能性もあります。
助けてほしいなら、明確に言葉でそう伝える必要があるのです。

(4)勝手にコミュニケーションを打ち切る。

社交不安障害を含めて、適切な対人関係を築きにくい人に
よくみられるパターンですが、

何分か相手と会話して、思ったように理解してもらえないとか
相手の反応が予想と違った場合、そのずれについて
じっくり話し合う必要があるのですが、実際にはそうできず
沈黙してそれ以降の対話を拒否するとか、
勝手に席を立って別室に行ってしまうなどの、
対話打ち切りを強行してしまいます。

こうしたパターンが繰り返されると、お互いに
「対話しても良いことにならない、ムダな労力を費やして
疲れるだけだから、止めておこう」
という間違った結論になってしまい、人間関係の改善や成長が
得られなくなってしまいます。

コミュニケーションパターンの改善法

それではこうした偏ったコミュニケーションパターンを改善し
より良い人間関係にするには、どんな点を意識すれば良いでしょうか?
大切なのは、以下のポイントです。

(1)理解してもらいたいなら、言葉を使ってわかりやすく相手に伝える練習が必要である。
「以心伝心」はない、と心得る。

そのためには、よく行き違いを起こしがちな相手を想定しながら、
普段どんなふうに上手くいかないのか、
どんな順番でどんな言葉を使って表現したらわかってもらいやすいかを
ノートなどに書き出しながら、
表現をブラッシュアップしていく必要があります。

そして表現法が決まったら、まずは何度も1人でリハーサルし、
次いで実際の相手との場面でそれを実行してみます。

上手くいったらその成果を記録し、
次回も忘れず使えるようにしておきます。

上手くいかなかったら、どこが良くなかったか、
自分のどんな不適切な表現で相手の感情が乱れてしまったか
などを記録し、改善法を考えて、再度リハーサル。

改善案で、次回相手とまた実際にやりとりしてみます。
これを、上手くいくまで何度も練習します。

(2)怒りをはじめとするネガティブ感情を感じることと、それを爆発させることとは全く別物である。

抑えているだけでは相手に伝わらないが、
感情を爆発させてしまっては相手も感情的になるだけで逆効果ので、
自分がどの場面でどんな辛い感情を感じたのかを
相手を非難するようなニュアンスをつけずに伝えることが重要です。

最初はつい、非難や怒りの感情に
振り回された形でしか表現できないので、
台本を書いた上で、相手に話す前に
1人で何度も何度もリハーサルしましょう。

その手間は必ず、報われます。

(3)相手が怒っている時には
「相手もパニックになって、困っているのだな」と見るようにする。

自分と同じように相手も、余裕がなくなった時、急に困ったことが起きた時、疲れている時などは普段以上に興奮しやすくなり、怒鳴ったり
攻撃的になりやすいでしょう。

このように「相手の不機嫌は相手の側の問題」だと受け止めることで
社交不安障害の人によくありがちな、
「この人の機嫌をとってあげるのは私の責任」
といった理不尽な思い込みによる反応が減るので、

たとえ相手が以前と同じようにイライラ、ガミガミしていても
自分の方はだんだんと動揺しなくなっていけます。

「アサーション」について

「感情に振り回されず、自分の意見や要求を適切な形で
相手に表現し伝える」
というこのスキルは、心理療法で「アサーション」あるいは
「アサーティブ・コミュニケーション」といいます。

先ほど述べた他にも、いくつかとても役立つコツがあります。
それらが載っている本『弁証法的行動療法実践トレーニングブック』
へのリンクも動画下の概要欄に貼っておきますので、
ご関心のある方はチェックしてみてくださいね。

アサーションについては今後の記事と動画でも
更に詳しくお伝えしていきます。

<参考図書>
『対人関係療法でなおす社交不安障害』

『弁証法的行動療法実践トレーニングブック』

<関連動画>
パニック障害を自分で治すには【成功率を決める考え方と行動法】 
強迫性障害の自己治療法とは 
強迫性障害と上手く「共存」するコツ  

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ホリスティック(※)精神科医として、できるだけ薬を使わずメンタル改善する方法を様々に模索し、相談者にご提供してきました。このブログではその中でも特にアート(特に絵画療法)のエッセンスを通じてあなたが自己ヒーリングできるように工夫した情報を発信していきます。 ーーーーー ※ホリスティック:「統合的、総合的な」という意味。ここでは薬物療法オンリーの従来型精神医学の限界を突破するために深層心理学、催眠療法(ヒプノセラピー)その他のスピリチュアル、アロマセラピー、そして精神症状を改善するエビデンスのある分子整合(オーソモレキュラー)栄養療法を通じてメンタル不調を改善することを指します。