目次
メンタル不調から復帰するには
【主治医を決めることの重要性】
仕事柄、うつや不安で悩む多くの方々とお話しします。
その中で、やむを得ず会社を休職し自宅療養となる人も多いのですが、
療養に入る最初の段階で、治療の方向性やゴール、
具体的な期間や手段がご本人と担当医の間で具体的に話し合われないまま、
数ヶ月も経っている例も散見されます。
そしてそうした事例であるほど、担当医(主治医)を決めることの
大切さも認識されていない場合が多いため、
数ヶ月自宅療養後、いきなり私(初対面)の日に受診し
「来週から復職したいと思うから、その許可の診断書を書いてほしい」
といわれ、戸惑ってしまうことがあります。
ある人が職場に復帰して良いかどうかを判断するためには
普段からのご本人の状態、すなわち
・勤務に支障ないほどの体力、気力(対人関係ストレスに耐える力を含む)が回復しているか?
・就寝・起床のリズムが、勤務生活にほぼ一致できているか?
・休職に至った原因を取り除くか、少なくとも大幅に軽減できるように、職場と話し合いを進めてきているか?
といった要素を一つ一つ明確化しなくてはなりません。
もちろんカルテにはある程度の情報は共有されていますが、
それらは医療上必要最低限のものが中心です。
なぜなら(自費診療のように、1人で数十分以上もかけられる診察スタイルとは違って)保険診療では、
特に再診では、せいぜい5~10分しかかけられないからです。
(日に100人も診ている「人気」クリニックもありますが、
そうした所の診察は1人20秒~1分です。)
でなければ、その人の後に待っている、
日に何十人も患者さんを診られず、
その医療機関は倒産してしまうでしょう。
(つまり自費診療では、他の十人~数十人患者さんの分に相当する時間を
患者さん1人が「買って」いると考えることができます。
だからこそ、1人数万~数十万円かかるのです。)
また、医師がカルテをじっくり読み返したいと思っても、
既に数ヶ月~数年分もある場合などだとそれを読んでいくだけでも時間がかかり、
これも短時間診察の中では非現実的です。
またいくら(診察外の隙間時間をフル活用するなどして)
カルテを丁寧に読み込んだとしても、
患者さんの表情・仕草・声音・服装・話の流れなど、
同じ医師が定点観測的に診てきてこそ浮かび上がる「ニュアンスの違い」
というものもあります。
毎回のように異なる医師を受診していてはその辺りの連続性が
ない情報となり、ご本人にとってもデメリットです。
もちろん、体調や自宅からの距離、曜日などの関係で、
なかなか一定の医師の日に受診できない場合もあるでしょう。
その場合でも
・前回受診時と比べて、どこがどう変化したか、
あるいは変化しなかったのか
・復職するなら必要と思われるレベルと比べて、
現在のご自身の状態はどのくらい近づいているか、
またその根拠は?
・最近、職場側とどのような話し合いをしているか?
といったことを、患者さん側からも積極的に
情報提供してくださると助かります。
それによって、ご本人がどのくらい復職可能生があるか
判断しやすくなります。
病状によって、復職に必要なことの優先度が違う
また、同じように「うつ、落ち込み」「不安」「不眠」という症状があげられていても、それが
・うつ病性のものなのか
・特定の対人ストレスからくるものなのか
・業務の種類や労務環境の問題なのか
・発達障害が背景にあり、「適材適所」になっていないから生じた問題なのか
によって、治療/復職プランも大幅に変わってきます。
うつ病の場合
例えばうつ病ならば(必要に応じて抗うつ薬等も使いながら):
・身の回りのことが1人でできる
・読書や書類の理解といった集中力、判断力も回復してきている
・週に5~6日は半日以上(できれば終日)外出でき、
親しくない他人の集団の中にいても過剰に疲れず毎日をを送れている
という状態が、少なくとも2週間は連続で継続できている、
という実績が必要です。
もちろん、
・安定的に睡眠がとれている(そしてその睡眠パターンのまま勤務を始めてもほとんどギャップがない)こと
・日に2回以上はそこそこの量と質の食事を摂れていること
も、前提として重要です。
より詳しくは「うつ病を自宅で治す『セルフリワークプログラム』」
にも述べてありますので、ご参照ください。
不安障害の場合
一方でうつ病を発病するまではいかなかったが、
職場の対人ストレスや、長時間労働が常態化していた故に消耗し
発病した場合には、復職に際し
・そのストレス源の相手から距離を置けるのか(異動等により)
・自分の仕事を一緒に分担してくれる人員を増やしてもらえるのか
等、勤務環境を改善しない限り、
時期が来たからとただ復職しても、再発するのは目に見えています。
以前診たある患者さんは、何回転職しても半年以内に体調を崩して退職していたのですが、
それは対人関係ストレス(レベル的には、誰でも経験するような種類と強度のもの)がかかった場合に、自身の意見や要望を相手に伝えることができず、
ただ怒りと不満をためこんでいるうちに
「動悸、吐き気、頭痛、めまい、肩こり、下痢」e.t.c. を発症し
「体調不良になってしまったのだから、しかたない」
と欠勤→休職→退職、というパターンを繰り返していました。
しかしこの方がするべきだったのは
・適切な自己主張の仕方を学び、日々訓練する、そして
・「対人関係は相互関係」なので、
「『自分ばかり、いつも相手に理不尽なことをいわれる、される』
という状況が繰り返されるということは、
『自分側のコミュニケーションパターンにも問題があるのではないか?』
を検討すること」
だったのです。
また、通勤電車や会議など、勤務に際しての特定の状況でパニック症発作を起こしてしまったことが休職のきっかけだった場合、
段階的にそうした環境に身を置く訓練を繰り返して
パニック症状を起こしにくくする、またたとえ起きても
それでまた欠勤するには至らず、
(どうしても必要なら最小限の精神安定剤を使いながら)
自己コントロール力を身につけて、症状を「飼い慣らし」ながら勤務できるようにする、
というのが現実的な目標設定となります。
自分一人でもできる「リワーク(復職)プログラム」の方法
さてこのように主治医を決め、自身の病状(診断名)に応じた
治療/復職計画を立ててもらいながら、
2週間に1回程度は定期通院する。
というのがベースとなりますが、
とはいえ、ほとんどの日々は自分一人で考え、判断し、
行動していかねばなりません。
心理カウンセリングもそうで、たとえ毎週通ったとしても、
週7日のうち6日は、自分で自分の落ち込みや不安を手なづけ、
上手く共存していく必要があります。
そこでどの診断名の人にも有効な
「セルフリワークプログラム」
のための方法をお伝えしましょう。
まずポイントを述べると、以下の内容になります。
・毎日の記録(行動、体調)をつける
・毎日のメンタル記録もつける
・メンタル改善も筋トレと同じ。改善の自覚までに3ヶ月かかるのは普通
毎日の記録(行動、体調)をつける
紙のノートでもスマホ等への記録でも良いで、
生活記録を毎日つけましょう。
例えば起床時間、食事の時間とその簡単な内容、外出先とその時刻、
就寝時間、誰と話したか、そして全般的な体調や気分など。
女性なら月経周期も書いておくと、心身の調子との関連が見えやすくなるでしょう。
これにより、診察の短い時間の中でも主治医が、
あなたが最近どのようなパターンの生活を送っているのかが
イメージしやすくなり、したがって適切で具体的な
助言をしやすくなります。
実行しやすいメンタル改善法を複数手に入れ、活用する
自宅にいながらでも、自分でメンタルを改善する手段は
複数手に入れることができます。
特に最近はインターネットのおかげで、
書店や図書館に通わずとも、気分や意欲をアップさせ
不安を軽減する手法をいろいろ学び身につけることが
できるようになりました。
以下は、重要かつ有効な手法のいくつかです。
まずは1つずつでも良いので、取り入れていって
いただければと思います。
毎日のメンタル記録をつける
これは、前述の「毎日の記録をつける」の記録簿に記入していく形からでも良いのですが、
一日を振り返り、記録しておきましょう。
自由記述でも良いですし、最初は簡単に
「5段階評価でいくらか」を書いておくだけでも良いでしょう。
慣れてきたら、例えば落ち込みや不安が強かった日には
・何があったか、あるいは(何も起きていなくても)何を考えていて辛くなってしまったのか
・どんな症状だったのか
・どのくらいの時間続いたのか
・どのように改善したか(例 好きな映画を見た、友達に電話した、散歩に行った、メンタル改善法の動画を検索して視聴した、アロマを嗅ぎながらマッサージをした、早寝をした)
といったことを記録しておくと良いでしょう。
また、慣れてきたら「ポジティブ日記」をつけることも
精神状態を改善したり、悪化を予防するのにとても有効です。
詳しくは 「反省」のし過ぎは不幸をもたらす 中の
「ネガティブタイプからポジティブタイプに『自主練』する方法」
に書きましたので、ご参照ください。
自分を苦しめる思考や感情から離れるための手段を複数探し、
リストアップし、度々活用する
多くのメンタル不調の人は、不安や心配事があると
それについて繰り返し考えてしまいます。
このパターンは
「問題をしっかり認識することで解決策を考案するため」
が本来の出発点であり、考えることで妙案が思い浮かぶなら
ぜひ続けていただきたいですが、
既に経験から痛感しておられる通り、99%の例において
改善策など思い浮かばず、ただ堂々巡り思考にハマり、
その結果、考える前よりももっと消耗して、精神状態が悪化します。
なので、ここで最も現実的かつ生産的な行動とは
「嫌なことについて考えないようにする」ことです。
これは決して逃避ではなく、最も効率的な対処法なのです。
なぜなら「(考えても仕方がない)問題」から離れることで
精神状態が落ち着き、しばらくすると
逆に、現実的な改善案を思いつきやすくなったり、
必要な行動を起こす気力が回復しやすくなるからです。
なのでまずは、
「懸案事項について考え込むのを止め、気をそらす訓練をする」
ことが非常に重要になってきます。
そのための以下のような手段も、現在までにいろいろと知られ
効果が実証されたものもいくつもありますので、
ぜひ取り入れてください。
メンタル改善の「先輩」たちの手法を取り入れる
(1)例えば精神科医の動画(「樺沢紫苑」「新宿OP廣瀬クリニックの廣瀬久益」先生はお勧め)や、
うつ病や強迫性障害のもと患者で
自身の克服記録を述べている書籍や動画もいくつもあります。
これらをブックマークしておき、凹んだ時には
「3本見る」「20分間見る」などと、予め決めておくと良いでしょう。
また、「メンタル改善用の時間割」として、
毎日特定の時間帯に視聴すると習慣づけることで
不安や落ち込みへの予防力も強化できます。
(2)ハッピーエンドの映画やドラマなどを定期的に観る
脳は現実とフィクションを区別できない、というのは
以前の記事「絵の世界に入り込むイメージワークの手法」にも書いた通り。
なのでこれを利用して、定期的(理想は毎日、少なくとも週1本)は
ハッピーエンドの映画等を観ることで
「途中でいろいろトラブルはあっても、
最終的には上手くいき、幸せになれるのだ」
という刷り込みを、自分にしていくのです。
しかもこれは潜在意識(無意識)レベルで起こる変化なので、
あなたは普通どおりにただ
映画鑑賞を楽しんでいれば良いのです。
(3)自主トレアプリの活用
瞑想(マインドフルネス含む)は呼吸や身体の感覚に集中するので、
事項の「身体への刺激」も兼ねるのですが、
心身の健康に瞑想は着実な効果があります。
なので「スピリチュアルぽくて怪しい」などという先入観は排除し、
実用性を重んじて、ぜひトライしてください。
お勧め例として今回挙げるのは
はメンタリストDaiGo 氏らが開発したスマホアプリ
「メントレ」です。
スマホのカメラ機能を使うことで、自分で簡単に自律神経のリラックス度合いを測定でき、自動的に記録もつけられる上、希望すればSNS でシェアもできるなど、至れりつくせり(ただし今のところ、 iPhone 版のみのよう)。
しかも無料です。
試してみようと思われる方は、 iPhone の
「App Store」アプリを開き「メントレ」で検索して
ダウンロードしてください。
身体を刺激することで心も改善できる
最近は多くの研究成果が発表され、
これまで心と身体は別々と思われていたのが、
実際には身体から心に影響を及ぼせるし、逆に
心のありようが身体症状を作ってしまうことも、詳しくわかってきました。
詳しくは メンタル改善も「形から」
の中に書きましたので、ご活用ください。
メントレも 筋トレと同じ。
改善の自覚までに3ヶ月かかるのは普通
「ダイエットする」「筋肉をつける」「テニスをできるようになる」「英語をそれなりに話せるようになる」・・・。
どれも需要が多く、毎年たくさんの人が目指しますが、
挫折する人も少なくないのは、ご存知の通りです。
そして挫折したからといって
「あのダイエット法はインチキだ!」
「自分は絶対やせられない体質なんだ!」
と決めつけるよりは、
「継続力が足りなかった」
「コミットメント(やりとげるぞという決意)が足りなかった」
と考える方が現実的だし、
「継続するための習慣化をどのようにするか」とか、
「これを達成できなかった場合の、自分に降りかかる膨大なデメリット」
を自分の中でハッキリさせる(つまり明確な動機づけ)ことの方が、
次の成功に導きます。
メンタルトレーニングも同じです。
「こころの時代」といわれるようになってはや30年。
人口の一定割合の人が、生涯のどこかで
うつ病や不安障害にかかるというのも
徐々に知られるようになってきましたし、
「うつになるなんて、気合いが足りないのだ」
という無茶な根性論を述べる人も(昔よりは)だいぶ減ってきました。
メンタルクリニックも、大都市のみならず、
地方の小さな都市にも複数開設しているのを見かけることも
珍しくなくなりました。
それでもなぜか、メンタル不調を治そうとする場合、
当人の家族や上司のみならず、ご本人さえも
「気の持ち方を少し変えれば、1~数回でよくなるはずだ」
という幻想を抱いている場合が、非常に多いのです。
このため、この後解説するような、
「自分一人でマイペースででき」
「国内外の研究で効果が実証されており」
「無料か、極めて廉価で実行できる」
方法をお伝えしても、何度か試すものの、
思ったほどすぐにこれといった改善を感じられないと
止めたり、忘れたりしてしまう人が
残念ながら大半です。
しかし、考えてもみてください。
これまでの十数年~数十年にわたり、
親や教師、あるいは友人や先輩たちからの影響で刷り込まれた
・自信をなくすようなものの見方、価値観
・ストレスを受けた際の反応の仕方
・コミュニケーションスキル
によって、現在のメンタル不調があるのですから、
メンタル改善したいなら、それとは異なる、
自分がより楽になるような
・物事への見方、受け止め方
・ストレス対処スキル
・コミュニケーションスキル
を「学び直す」必要があるわけで。
筋トレでも、語学習得でも、スポーツや楽器の習得でも
新しいことを身に着けようと思ったら、
「基礎編」を学んで身につけるのにはやはり、
少なくとも3ヶ月程度はかかるのが普通だと思いませんか?
しかもそれも、基本的に(少しずつでも良いので)
毎日練習を実行して、ですよね。
なので無理ないペースで良いので、根気強く
「自分を辛くさせる古い習慣」を
「自分を楽にする新たな習慣」に
上書きしていきましょう。
ホリスティック(※)精神科医として、できるだけ薬を使わずメンタル改善する方法を様々に模索し、相談者にご提供してきました。このブログではその中でも特にアート(特に絵画療法)のエッセンスを通じてあなたが自己ヒーリングできるように工夫した情報を発信していきます。
ーーーーー
※ホリスティック:「統合的、総合的な」という意味。ここでは薬物療法オンリーの従来型精神医学の限界を突破するために深層心理学、催眠療法(ヒプノセラピー)その他のスピリチュアル、アロマセラピー、そして精神症状を改善するエビデンスのある分子整合(オーソモレキュラー)栄養療法を通じてメンタル不調を改善することを指します。
コメントを残す