強迫性障害を自分で改善するコツ

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強迫性障害を自分で改善するコツ

手洗いや戸締まりなどを何度も確認せずにはおれないという
強迫性障害に、悩まされている人は結構おられます。

ともすれば「ちょっとこだわりが強めなだけ」と思っているうちに
悪化し、社会生活はもちろん、日常生活にも支障をきたす場合も
珍しくないので、正しい対応法を知っておくことが重要です。

なので今回は強迫性障害と、自己治療に役立つ情報をお伝えします。

強迫性障害の間違った対処法と正しい対処法

現代社会で多い不安障害の一つに「強迫性障害」があります。

典型的なのは、手洗いを何度も何度もしてしまう、このため
トイレやお風呂にいくのが苦痛で怖くなってしまうとか、
戸締まりや火の元の確認を何度行なってもすぐまた気になってしまい
いつまでの次の行動に移れない、などです。

その他、駅のホームなどでしらぬうちに他人にぶつかって
突き落としてしまったのではとか
車を運転していて誰かを轢いてしまったのではなどと不安になる、

あるいはスーパーなどで商品を触ったが最後、
それを汚してしまったのでは、傷つけてしまったのではと
不安になるので棚に戻せないという人もいます。

逆に、商品など外出先で何か物を触ったら
その「汚れ」が自分についてしまうから
触れない、帰宅後は服を全部着替えて
入浴もしなければ気がすまない、
というパターンの人もいます。

同じように「出先で物に触る」という行動なのに
「汚染」の方向性が真逆なのが、
当人の性格や考え方を反映しているわけで、
精神面の治療家としては、非常に考えさせられる現象です。

それはともかく、こんな症状にさいなまれていたら、
それは社会生活はもちろん、
日常生活にも支障が出て、毎日が苦しくてしかたないですよね。

なので、パニック障害と並んで強迫性障害は
人が身の回りの環境や人々と適応していくにあたり、
大きなハードルとなります。

しかも一見、性格的なもの――例えば
几帳面だとかきれい好きだとか
通常「良い」とされる特徴がちょっと過剰に
なっただけではと最初は見えるため、

なんとなく自分で対処しているうちに悪化し、
ついには自宅でもほとんど身動きできない
ほどになってしまう人もいます。

なので、強迫性障害を正しく知り、
できるだけ早い段階で正しいアプローチで改善
していくことがとても重要なのです。

まだ症状が始まって数ヶ月以内とか、
症状の程度や範囲が比較的浅いうちなら
正しい認知と、その認知に基づいた正しい行動訓練によって
自分で治していくことも可能ですので、
ぜひ正しい対処法を知っていただければと思います。

私自身の体験

日本人は遺伝子上の特性としてそもそも不安が強く悲観的
という研究結果が出てきていますが、
私自身もご多分にもれず、心配性な方です。

今回のテーマである強迫性不安に関しては、
私も以下の2点について経験があり、
それもあって、今回の動画を作成することにしました。

私は5歳から7歳までの2年間、北米で暮らしていました。
親が研究員として大学のメディカルセンターに
留学することになったからです。

なので、ちょうど小学校に上がる頃に
アメリカで小学校に入学した形です。
言語も、生活風習も、周りの人達もまるごと入れ替わり、
環境が激変しました。

この年齢では言葉による思考や詳しい表現は無理です。
なので様々な不安や葛藤は、体調や行動の異変として
現れていました。

例えば5分ごとにトイレに行かないと不安でいられない、
つまり心因性頻尿ですね、そういうのがありましたし、あとは
例えば、特定の回数、足をブラブラさせなければ
不吉なことが起こると信じ込み
しょっちゅう足をブラブラすることばかり気にしていた、とかです。

幸い、クラスメイトや近所の同い年くらいの子どもたちの何人かと
数カ月後には親友になれたので、それからは特に困るような
症状からは開放されました。

ただまあ、もともとが不安の強い気質なのは変わらないので
現在でも油断すると複数回、
戸締まりや火の元を確認したくなる時はあります。

そんな時は「あ、今ちょっと、上の空になっていて
戸締まりという目の前の行為に
集中できていなかったな。気をつけよう」
と自分に心の中で声をかけて、その場から離れるようにします。

後でもご説明しますが、強迫性障害の治療ゴールとは
「症状をなくすことではなく、社会適応に支障が出ない程度に
コントロールできるようになること」
なので、それでOK なのです。

強迫性障害の位置づけを大枠でとらえる

強迫性障害の不安症状は
「汚染される」「侵入される」「傷つけられる」といった
「安全性が脅かされる不安」がテーマであることが多いです。

(人によっては、そこに無意識レベルの葛藤があって
むしろ「自分が他人を傷つけてしまう」という症状の形で
表現されることもありますが、根っこは一緒です。)

大事なのは、表面に現れている個々のさまざまな症状に
注目するのではなく、
その根本をなしている、より大きな不安や葛藤やストレスに目を向け、
ある程度理解し、それをコントロールできるようになることなのです。

しかし強迫症状は苦しいので、正しい知識を学ばないうちは、
症状をなくそうとしたり、
症状のきっかけになるような環境を避けようとしてしまいます。
この誤った対応のせいで、多くの強迫性障害を持つ人が
悪化してしまいます。

パニック障害の自己治療の動画の中でも述べていますが、
不安障害の治療ゴールとは不安をなくすことではありません。
そうではなく、不安を抱えつつもそれに過度に振り回されず、
目の前の必要な行動を取れるようになること、なのです。

強迫性症状の改善に必要な考え方とは

ではこの観点から、強迫性不安が湧いてきたら
どうすれば良いのかを、具体的に述べていきましょう。

例えば不潔恐怖から、何十回も手を洗わないと気が済まないという場合。

せっかく手を洗ったのに蛇口を最後に触ると不潔になるからと、
わざわざセンサー付きの蛇口に自宅の水道をリフォームする
人もいるかもしれません。

しかしいくらそれで蛇口を触らずに済むようになっても、
ふと他の場所――例えば手首とか肘とかが流しの角に
触れてしまったのではと考えたとたん、
振り出しに戻ってしまいます。

つまり外部的、すなわち物理的に環境をどんなに整えても、
内面的、つまり心の中で不潔を嫌い完璧な清潔を求める
という気持ちを変えていかない限り、
症状の改善も望めないのです。

また、特定の細菌やウイルスが感染したらどうしようと不安になり、
ネット情報を調べまくる人がいます。

しかしどんなに詳細に知識を得たとしても――
例えば●●菌は何℃の加熱で何分間以上消毒すれば死滅するかとか
Aという薬剤で何秒以上洗えば消毒したことになるか
といった知識を得たところで、結局は安心感は得られません。

その結果、例えば通院時に
「この場合は安全ですか?こちらの場合は?」
と事細かに主治医に質問したり、
「必ず治ると、大丈夫だと言ってください!」
などと、何度も確認したり、保証を求めたりすることも
よく見られます。

しかもその不安は適切なレベルを超えた過剰なものなので、
毎回の診察で主治医が「大丈夫」と言ってあげたとしても
数分後にはまた「大丈夫だと言ってください」と繰り返す、
ということになってしまいます。
これではきりがありません。

なので、
・不安要素を完璧に環境から取り除こうとするのは
 非現実的で不可能な対処法である、ということを知ってください。

その代わりに、治療目標としてめざす方向性とは

・強迫不安は今後も繰り返し湧いてくるものだが、
それを織り込み済みのものとして受け入れ、
不安を抱えつつもできるだけ強迫行為をせずに、
目の前の必要な行動をできるようになること

です。

目の前の必要な行動をできるようになってくると、生活の質も上がるし
社会適応も、対人関係も改善するので、その結果
自尊心も上がり、それに連動して気分も上向き、
意欲や行動力も増えていきます。
こうして、人生全般が好循環し始めるのです。

まず、自身の心の内面を直視し、書き出す

で、実際に不安を抱えつつやり過ごして、目の前の行動に
集中するための方法は後半でお伝えしますが、
まずは、表面的な強迫不安や強迫行為の根っこになっている
根本的な不安をじっくり探り、直視し、それを整理していく
というプロセスが、実は非常に重要です。

このことはこれまでにも、過去記事
パニック障害を自分で治すコツ」の中で詳しく述べていますが、
自分のストレス、葛藤の原因を突き止めて向き合わないと、
その後の行動療法のための行動が出来にくくなったり、
そもそも行動療法を続ける気力が続かなくなってしまいます。

なぜなら強迫症状とは、心の奥底にある、最も見たくない
ものを代わりに表現することで、根本に向き合わずに済むという
ある種のメリットがあるのですが、根本原因に対処せずに
行動療法で仮に強迫症状が治ってしまったら
根本の不安に蓋をしておく手段が消えてしまうこととなり、
それはもっと怖いことに感じるからです。

なので取り組む順番としてはまずは心の奥底にある
根本的な不安を探り、直視し、向き合っても大丈夫だと
わかるようになることであり、

その後で初めて、
それでも長年の習慣で、ことあるごとに湧き上がってくる
強迫不安を上手にやり過ごすために
行動療法を実行していく、ということになります。

なので、過去動画「パニック障害を自分で治すコツ」にある
「書き出しワーク」を、強迫性障害の治療においても
しっかり行なうことをお勧めします。

もしも単独では圧倒されてしまうので難しい、という場合には
毎週1時間程度の集中的な心理カウンセリングを
受ける必要があるでしょう。

強迫性障害の治療に慣れたカウンセラーならば、
毎週1時間通えば、早ければ半年間、平均的には2~3年間で
かなり改善して、日常生活も社会生活も生きやすくなることが多いです。

行動療法のコツ

さてある程度自分の内面のストレスや葛藤を把握できるようになったら、
行動療法に取りかかるのに良い時期です。

この行動療法を「暴露反応妨害法」といいます。

これは、今までなら強迫不安を打ち消すためにしていた行動、つまり
反応を、自分の意志であえて行なわないようにすることで
強迫不安を治していく方法です。

例えば、手が汚れたと感じたので洗いたいと感じても、洗わない。
例えば食事前やトイレ後など、通常でも洗う場面では
他の人と同様、1回のみ洗い、決して繰り返さない
と強く決め、それを実行することです。

洗う回数を減らした直後は、不安感が非常に強まります。
しかしそこで動かず、我慢すると、数十秒から数分後には
かなり不安の強さが弱まることがわかるようになります。

この経験を、強迫不安と、それに伴う強迫行為を
したくなるたびに繰り返します。
つまり、

洗いたくなっても洗わない、
戸締まりや火の元を最初の1回以降は見ない、
その他にも、気になった現場に確かめに戻らない、
ということです。

強迫不安は、湧いた直後が最も強く、時間経過とともに弱まります。
しかしこのシンプルな原理も、実際に実行して自分が
体験するまでは、なかなか信じられないものです。
なので、とにかく実行し、体験を積みましょう。

なお、強迫行為とは傍(はた)から見てわかるものだけではありません。
気になったさっきの出来事や、あるいは何ヶ月も前の出来事について
詳細を思い出して、なんとか大丈夫だという安心感を得ようと
記憶を探り、考えにふけるのも、頭の中の「強迫行為」だといえます。

これもあなたの不安を悪化させるだけなので、止めましょう。

他人を巻き込まない

また、家族をはじめとする身近な人を巻き込むのも止めましょう。

具体的には、
「さっき戸締まりしたよね?」とか
「私、さっきそこに触らなかったよね?」
などと訊いて確認したり、
ドアノブに触れたくないからと家族にドアを開けてもらったり
する、といったことです。

他人に頼るとますます自分が弱く感じられて不安が高まりますし
身近な人達も繰り返し確認されると疲れ切ってイライラするので
人間関係も悪くなります。

それに他人である以上、自分の思う通りには反応してくれないことも
あるのは当然なのですが、今度はそのことでまた
あなたのイライラや不安が増すこともあり、逆効果です。

例外を作らない&確認衝動を中断する

また行動療法で良くしていくにためは
「例外」や「聖域(サンクチュアリ)」
を作らないこともポイントです。

例えば
・自分の部屋だけは完璧に清潔にしたいからと、
 家族が郵便物や洗濯物を持ってくるのも許さない とか、

・外出の際に着ていた服を、玄関で全部着替えてからでないと
 家の中に入れない

といった形で、特殊エリアを残しておくと
そこから次第に不潔不安が広がって、
他の場所での症状が悪化しやすくなり、
治療の妨害となってしまうので、止めましょう。

暴露反応妨害法とは
強迫不安から強迫行為をしそうになった時に
基本はただ「それをしないぞ」と思い出し、
強迫行為をしない時間を
数十秒から数分間以上確保することです。

しかし、この「強迫行為をしない」ためのコツを1つ、
最後にお伝えしておきましょう。

これは他の強迫性障害の治療本にも
ほとんど書いていないものですが、
とても役立つコツなので、

これまで述べた「暴露反応妨害法」だけでは
なかなかうまくいない、その理由がわからない、
という人は、ぜひ取り入れてください。

それは
確認行為をしたくなったら、それを
より無害な別の行為のトリガー(引き金)にする
というものです。

例えば
「あっ、今、洗い終わったはずの肘を流しに触れてしまった気がする。
 洗い直したい!」
と思ったとき、すぐに洗い直すという強迫行為に突進するのではなく
「目を閉じて、深呼吸を10回行なう」
と決めておくのです。

そして、強迫不安が湧いたら
強迫行為に移る前に必ずこの別の行為――この例では深呼吸――
を実行する、という訓練をしましょう。

習慣づけができるまでは、不安に圧倒されて忘れがちなので、
例えば30分に1回、スマホにリマインダーが飛んでくるようにしておいて

「ああ、そうだだった。強迫不安が湧いたときには
直ちに強迫行為をしてしまうのではなく、
まずは深呼吸を10回するんだった」

予め、何度も思い出す機会をつくるように設定しておきます

自分に向き合い、行動することで
改善

強迫性障害に縛られた日常は、著しく苦しいものです。

私が昔、定期的にカウンセリングをしていたあるクライアントさんは
治療を始める時の目標として

「日常生活があまり不安なく、1人でも送れるようにしたい。
公共の乗り物やお店に、汚れを気にせずに行けて、
好きに買い物ができたらいいなあ。
ついでに趣味の会とか、スポーツジムとかにも
定期的に行けるようになれたら、夢のようだ」

と言っておられたのですが、数年後に治療を「卒業」する頃には
全てを手に入れておられました。

この方は私の所に来るまでに10年以上強迫症状に悩まされていたので、
良くなって、本当にホッとされていました。

このように強迫性障害は、正しい知識を学び、
正しい内面のワークを行なった後、根気強く行動療法をすれば
かなり改善が期待できる人は多いので、
ぜひ、あなたのより良い人生のために
きちんと取り組んでくださいね。

<関連記事>
パニック障害を自分で治すコツ

<参考図書>
『強迫性障害の治療ガイド』
※純粋な行動療法(暴露反応妨害法)ワークブックです。

『こだわり思考とうまく付き合うためのワークブック』
※認知行動療法とマインドフルネスの合せ技です。
本文で紹介した「代わりに深呼吸を取り入れる」は、
あえていえば、マインドフルネスの活用ともいえます。

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ホリスティック(※)精神科医として、できるだけ薬を使わずメンタル改善する方法を様々に模索し、相談者にご提供してきました。このブログではその中でも特にアート(特に絵画療法)のエッセンスを通じてあなたが自己ヒーリングできるように工夫した情報を発信していきます。 ーーーーー ※ホリスティック:「統合的、総合的な」という意味。ここでは薬物療法オンリーの従来型精神医学の限界を突破するために深層心理学、催眠療法(ヒプノセラピー)その他のスピリチュアル、アロマセラピー、そして精神症状を改善するエビデンスのある分子整合(オーソモレキュラー)栄養療法を通じてメンタル不調を改善することを指します。