トラウマさえも、あなたの成長チャンスになる

トラウマさえも、あなたの成長チャンスになる【PTSDではなくPTGへ】

『トラウマ後成長と回復』(スティーヴン・ジョゼフ著、筑摩書房)より

PTSD(心的外傷後ストレス障害)という用語は、
特に長期にわたったベトナム戦争帰還兵たちの
精神的・長期的不調と社会への適応障害が
目立つようになってから世間でも知られるようになりました。

その頃、このテーマを扱った多くの映画も制作されています。
例えば「タクシードライバー」「ディア・ハンター」
「7月4日に生まれて」「ランボー」「勇者たちの戦場」
などです。

目の前で人が死んだり重症を負う、あるいは
自身が死に近い体験をするといった後では
環境、他人、そして自分自身への
信頼感や安心感が剥奪され、慢性的な
緊張と恐怖心、不信感や絶望感の中で
生きていかねがならなくなります。

このため、トラウマ(心的外傷)を思い起こさせるような
ちょっとしたきっかけだけでも過剰に不安定になり
社会生活はもちろん、親しいはずの人たちとさえ
交流を断ち、孤独の中に引きこもってしまう
人も少なくありません。

すると希望も見えず、人生が辛いので
アルコールや薬物などに依存しやすくなってしまいます。

こうした戦争絡みのPTSDは、米国対ソ連といった
明確な対立が目立たなくなってからは
あまり社会問題として注目されなくなっていました。

しかし1995年1月の阪神・淡路大震災と3月の地下鉄サリン事件
さらには2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件
世界中が驚かされ、また
2011年3月11日の東日本大震災でも
多くの犠牲者が出ました。

特に2000年代に入ってからの事件では
インターネットの普及により、
事件・事故の詳細な情報が、動画を含めて
刻々と、かつ繰り返し報道されたため、
世界中の多くの人々の脳裏に焼き付けられたことと思います。

私は以前、自衛隊の医官だったため、
阪神・淡路大震災のおりには救助活動に
入ったこともあります。

2000年代には既に防衛省を退職後だったので
世間と同様の間接的な情報を受取るのみでしたが、
そんな私でも「あれ?、これもわずかに外傷傾向?」
との症状を感じることがありました。

現実的には全く無関係だし生活上の支障もないレベルでしたが
違和感を感じたのが、2つの映画を見たとき。

1つは「崖の上のポニョ」、もう1つが
「ナルニア国物語 第3章: アスラン王と魔法の島」です。

「ポニョ」では嵐の中、主人公の家族か誰かが車を運転して
自宅に帰るシーンがあるのですが、そこで
何度も、荒れた海の大波が、崖ぞいの山道に届きそうになり、
車は危うく難を逃れて帰り着く、というシーン。

「アスラン王と魔法の島」では、映画の最終シーンで
ライオン王アスランと主人公たちが、数十メートルの高波の壁に囲まれ
決意の末に(魔法の国から)現実世界に歩いて帰る、
というシーンがあるのですが、

そしてこのシーンでは主人公たちに話しかけながら
アスランが各自の意思を確認するという
大切なシーンなのですが、
私は終始、背景でモゾモゾ動き続けている(崩れ落ちてはこないのですが)
高波がちょっと怖くて、気になって仕方ありませんでした。

これも、3.11.事件が起きた際、津波で
家々や木々がなぎ倒され、廃墟になっていく様が
繰り返しテレビで報道された影響の一つでしょう。

特に住宅街で、家々の基礎工事を示す四角い枠だけ残して
見る見るうちに「更地」にされていった映像は
強烈な印象でした。

直接的な経験のなかった私でさえこのような影響を受けたくらいですから
ましてや現場にいた人たちの心への衝撃はいかほどだったことでしょう。

。。。。。。

人生のいつ、どのような形で、大きな傷を受けることになるかは
誰にもわからないし、制御もできないことです。

それでも、トラウマを受けてそのまま立ち直れない人
PTSD =心的外傷後ストレス障害)と、
立ち直り更に成長し強くなる人(PTG= 心的外傷後成長
の違いが生じることが、ここ数十年の研究で徐々に判明してきました。

そしてその違いは、その出来事に対する体験者の考え方、
特に出来事への意味づけによって決まるのです。

トラウマを体験した時、後悔、罪悪感、怒り、恨み、悲しみ、不安
といったネガティブ感情を湧かせるような思考を繰り返すこと
抑うつ的反芻(はんすう)」、逆に
「この出来事のお陰で得られる良い点は何か」を繰り返し考えることを
内省的反芻と言い、後者によってのみ、立ち直り成長できます。

トラウマを体験すると、それまでの
自分のアイデンティティが崩壊してしまいます。

そこから立ち直るには、以下のの「基本的心理ニーズ」が
満たされるよう、自ら行動する必要があることが、わかってきました。

【トラウマから立ち直るための基本的心理ニーズ】

・そのままの自分を愛し受容してくれる人間関係
・所属や繋がりの意識
・自分は必要な行動ができるという自己制御感
・トラウマをもたらした人物や出来事を正しく「許し」て得られる
 解放感と自由。

これに対して、上手く行かない対処法は「否認」「回避」です。

つまり自分が感じるネガティブな感情を見て見ぬふりをしたり
抑え込んで「なかったことにする」。

しかしネガティブ感情にまつわる心的エネルギーは
ただ抑え込んでも、無視しても存在し続けますし
時間の経過と共に溜まっていきます。

そして何かのきっかけで抑え込みきれなくなり、
突如爆発して、とんでもない衝動的行動に走ってしまったりします。

例えば怒りや号泣、暴力、リストカットなど自傷行為、自殺企図。
あるいは健忘をきたして、辛い感情経験そのものを
忘れようと(無意識レベルで)試みます。

これが離人症多重人格といわれる症状となります。

多重人格の人の生育歴には、親などによるシビアな虐待例が
しばしば含まれる、といわれてきましたが、
これも家庭という、自分は無力で親が絶対的力を持つ
「治外法権」な環境の中、

どうにか心身が生き延びるようにと、子供心のとっさの防衛反応として
「感情も記憶も自分から切り離してしまおう。
そうしたら感じにくくなり、少しは耐えやすいから」
という、無意識での心理的反応だったのです。

。。。。。。

トラウマ後の自分がその後の人生に適応し、さらには成長し、
より強くなり、充実した人生を送れるようになる対処法には
2つの型があることがわかってきました。
それは ①課題中心型 ②感情中心型  
です。

「課題中心型」とは、自分が心身の調子を回復させるために
必要な行動を選び、日々実行していくことです。

例えば事故で両腕を失った男性は
「義手を使ってまた車の運転ができる」と信じ、
退院と同時に理学療法を受け、筋トレのためのランニングや水泳も
開始し、同時にメンタルサポートを受けるためにセラピーにも通いました。

「感情中心型」は、トラウマとその後にまつわる精神的混乱を
心の専門家や、自身での各種ワークによって
「心の棚卸し」をして整理し、対処の優先順位をつけ、
その順位に従って日々、感情の整理をし続けていく方法です。

感情中心型の対処法によって自身を成長させるためには
必要な要素があり、それは
感情を描写する語彙を学び、増やし、日々使って表現してみる」
ことです。

心理カウンセラー相手に話すのもそうですし、
家族や親友に話すのもそうでしょう。

一人でも取り組めるワークとしては日記に書くほか、
現代ならブログやSNSで、自分が適度と感じる範囲で
毎日のように文章にまとめて表現・発信することが
大いに役立つでしょう。

で、この時重要になってくるのが
「自分が今感じている感情は、何なのか。どう感じているのか」
「どういう言葉が最適な表現なのか」
をわかることです。

つまり、語彙が少なすぎると感情のニュアンスを表現できず、
「イライラする」「落ち込んだ」くらいしか言えません。
もう少し現代的な表現なら
「ムカつく」「サイテー」「サイコー」でしょうか。

語彙が少ない人だと本当に、何か嫌なことがあると全て「サイテー」、
良いことがあると皆「サイコー」。

これではあまりにも大雑把過ぎるため、
「その出来事の中のどの要素が自分をそのような感情にさせたのか?」
「感情の動揺の程度は、どのくらいなのか?」
自分で把握できず、したがって
自分の変化も成長も観察困難となってしまいます。

最近(2017年頃以降でしょうか。本日は2019年)では、
特に若い世代では良いことも悪いことも
「ヤバい」の一言で済ませてしまうため、
なおさら自己の感情把握が難しくなっていると考えられます。

感情の語彙がないと感情を正しく表現できず
従って対処もできないので解消されず、
その分の葛藤エネルギーは身体症状に転換され、

身体的不調としてしか自覚もできないし、表現できなくなります

これを失感情症(アレキシサイミア)と言い、
これでは自身で本質的な対処ができないし、
家族等、周囲の人の理解もサポートの受けにくくなってしまいます

失感情症になった人は、表面に現れた身体症状を治そうと
あちこちの医療機関を受診してみるものの、
どこでも異常を指摘されず、しかし納得できずに
何年間もドクターショッピングを繰り返す。

あるいは解決策を見いだせない苦しさから
(前述の「否認」「回避」と同じく)自傷行為に走る、
何か(薬物、アルコール、買い物、ギャンブル、性関係e.t.c. )に依存する、健忘症になる、過食嘔吐など摂食障害になる・・・
といったことがよく見られます。

感情のトラブルを克服するには、
ある時点から真っ向勝負で感情に立ち向かい、
自分で制御できるように訓練していかねばならないのです。

この後すぐご説明するワーク「筆記開示」などは
このように「自分の感じたこと、考えたことを残らず書き尽くす
ものですが、これをきちんと、かつ継続して行なうと
つい十数年前くらいまでは治療困難といわれたきた
境界性人格障害にさえも優れた効果を発揮することがわかったのです。

境界性人格障害(BPD)にも有効な
画期的な心理療法【自己治療も可能】

人間関係不信と自尊心の低さから
安定した対人関係を築けない「境界性人格障害(BPD)」は、
従来の精神医学でも心理療法でも
有効な治療法がないとされてきました。

BPDの人は

・人間関係を白か黒に決めつけてしまい、
ほどほどの安定した関係ができない
・感情が極度に動揺し
それに耐えられず、自傷行為を繰り返す

このため意欲的な一部の精神分析医等が
時には入院環境も使い
何年もかけてようやく一部の事例で
ある程度の改善に成功してきたものです。

しかし近年編み出された「弁証法的行動療法(DBT)」により、
より効果的に改善しやすくなってきました。

これはうつ病や不安障害にも効果が確認されている心理療法
「認知行動療法(CBT)」を応用したもので、
CBTの考え方の他、以下のスキルや視点も
取り入れている点が特徴的です。

(1)自分の感情を観察し、把握・記録する
(2)苦悩耐性(感情的苦痛に耐える力)をつける:
 ①自分を傷つけない行動で気をそらす
 ②感情的苦痛と直面しても大丈夫だと納得できるようになる
(3)マインドフルネス瞑想の活用
(4)筆記開示(下記)

しかも軽症なら本人が自己治療も可能で、
既にそのための本も邦訳出版されています。

末尾に参考図書へのリンクも貼っておきます。

1人でも感情を把握し、整理し、そこから成長できるワークとは

自分の感情を感じ、それを分析し、考える・・・。
それまで自身の心の中を覗いてみたことのない人には、
何だかとてつもなく恐ろしいことに思われるかもしれません。

「自分の心の奥深い所なんかに入って行ったら、
とんでもなく醜悪な、恐ろしい化け物のような
自分の姿と出会うのではないか」
と多くの人がなんとなく感じていますが、
実際にはそんなことはありません。

かつて私がクライアントさんにヒプノセラピー(催眠療法)の
セッションをしていた時期、こうした課題を持つ方々に
イメージワークを行なってきましたが、

全ての例において、出会うのは幼少時の寂しそうな、
あるいは悲しそうな子供。
一見怒っているように見える例でも、話し合うとみるみる
和解し、相互理解を深められたものです。

。。。。。。

これから述べる、一人でできる「筆記開示」という作業は
自身のいろいろな思いを紙に書き出していくワークですが、
これも少しずつでも繰り返し、継続すれば
次第に心が落ち着いてくることが実感されるでしょう。

「筆記開示」の効果とその理由、具体的方法】

・イライラ、落ち込み、不安・・・ネガティブなことを
考えてしまう、感じてしまう。
・自傷行為や健忘、依存症、過食嘔吐など、
非生産的だ自分でもとわかっている行動を止められない。

こうしたことを、どのみち止められないなら、
いっそそれを直視し、徹底的に向き合った方が良いのです。

ただそのためには、考えているだけだと堂々めぐりになるので、
必ず書くことが大切
その具体的なやり方が以下です。↓↓

(1)1回あたり最短で8分間、かつ連続4日以上連続で実施する。

最初はタイマーをかけて、その時間だけはワークに集中しましょう。

8分も経たないうちに書くことがなくなったと感じても、
「何か出てこないか」と残り時間いっぱい、
一生懸命そのことだけを考える集中力が必要。
決して、スマホなどを見て気をそらしてはいけません。

数日~数週間置いてまた不快な感情や思考が湧き上がるなら
同じワークをその度に繰り返す。

これは「心のデトックス(浄化)」なので
身体に垢や便が溜まるのと同様、日々生きている以上
ゼロになることはないですが、
最初が一番大変で、その後は徐々に楽になり、
やがては定期的に多少のメンテナンスをすればOK、
というレベルになります。

(2)ポジティブな言葉とネガティブな言葉を
3:1の比率で書くとより効果的、という研究もあります。
でももし最初、どうしてもネガティブなことしか出てこなければ、
それが一旦尽きるまで思い切り書き出す(=吐き出す)と良い

(3)因果関係や洞察力を表す言葉を使う。例えば
原因:「なぜなら~だから」「原因/理由は~」「その結果(影響)として」
など。
洞察力:「意味」「知る」「考える」「理解する」「目的」など。

 

ちなみに、重症うつ病や統合失調症、
同性愛や各種依存症患者を独自のカウンセリング「YSメソッド」
で回復させた多くの実績を持つ佐藤康行氏は

著書『過去は自由に変えられる』の中で、
この意味付けをポジティブに変換するフォーマットとして
「これでよかった。なぜなら・・・」に続けて書くようにすると良い
と述べており、効果的かつわかりやすいコツですね。

<参考図書>
『弁証法的行動療法実践トレーニングブック
――自分の感情とよりうまくつきあってゆくために――』https://amzn.to/3gQuhOg

『弁証法的行動療法実践マニュアル―境界性パーソナリティ障害への新しいアプローチ』https://amzn.to/3dLRvTH

『過去は自由に変えられる』https://amzn.to/3fLi9NZ 

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ホリスティック(※)精神科医として、できるだけ薬を使わずメンタル改善する方法を様々に模索し、相談者にご提供してきました。このブログではその中でも特にアート(特に絵画療法)のエッセンスを通じてあなたが自己ヒーリングできるように工夫した情報を発信していきます。 ーーーーー ※ホリスティック:「統合的、総合的な」という意味。ここでは薬物療法オンリーの従来型精神医学の限界を突破するために深層心理学、催眠療法(ヒプノセラピー)その他のスピリチュアル、アロマセラピー、そして精神症状を改善するエビデンスのある分子整合(オーソモレキュラー)栄養療法を通じてメンタル不調を改善することを指します。