前回までの2つの記事
パニック障害の本質的治療とは
パニック障害を自分で治すコツ
では、パニック障害の本質は何か、そして
身体的症状を改善するには まず心理的ストレスを認め
心理的ストレス自体に取り組むワークが
必須であることを説明しました。
今回はそうした内面の取り組みをある程度以上
進めて来れた人向けに、いよいよ
「パニック障害を克服するための行動療法」
の方法をお伝えします。
目次
パニック障害の行動療法
【段階を踏むのがコツ】
パニック障害を自分で治していくために
有効な行動療法ですが、これには
ステップが複数あり、段階的に
進めていくことがコツです。
それを段階別に分けると、以下の3つになります。
1)事前にイメージング
2)少しずつ行動負荷を増やす。
そのための小ステップづくりと実行
3)記録し、繰り返し練習する
1)パニック症状の克服のステップ:
事前にイメージングする
人が何か行動する時には、それがたとえ
一瞬であれ、まず先にそれについて
考えています。
もっといえば、イメージしています。
例えば今日のランチを何にしようかと思った時、
「カレーか」「ラーメンか」「定食屋か」
など、何となく思い浮かべ、一番
美味しそうに感じる行き先に決めることでしょう。
同じように、嫌なことに対しても、
実際にそれが起こるよりも前に
何度もそのことを思い浮かべ、嫌な経験を
「予習」しているわけです。
そしてこの「予習」の段階で十分嫌な感覚を
味わってしまうため、実際の行動に至らず
行動を避けてしまう、ということが起こりがち。
パニック障害においても、1~数回、満員電車
の中で気分が悪くなり強い不安感を経験すると
「もう2度とあれは味わいたいくない」
と、電車や、通勤時間帯の移動を
避けようとしてしまいます。
起こる前から嫌なことを予め思い起こして
不安になるのを「予期不安」、
不安を起こさせるような環境や行動を
避けることを「回避行動」といいますが、
この「予期不安」→「回避行動」が
増えれば増えるほど、社会から孤立して役割を失い、
対人関係も乏しくなるので孤独になり、
ますます不安や、更には「自分は周りに嫌われている」
といった、被害妄想的な感覚に
とらわれやすくなります。
なのでそうなる前の段階で、できるだけ
集団や混雑などの環境に身を置いて
再び「慣れる」訓練を自分に課していく必要があります。
では、そうすれば良いのか。
ここで役立つのが、意図的に思い浮かべること
つまり「イメージング」です。
例えば朝のラッシュ時に通勤電車に乗るのが
極度に怖い場合は、
まずは通勤に使う最寄り駅を
・すいている時間帯(つまり通勤時間帯でない)
・遠くからの眺め(つまり、駅に近づいていないし、
ましてや駅に入っていない)
という画像で、思い浮かべます。
やってみるとわかりますが、
「混雑時間帯の電車内」というイメージに比べて
数分の1以下のプレッシャーに感じると思います。
しかし全く電車や駅のことを思い浮かべない
時に比べれば、少しプレッシャーを感じる。
これがちょうど良い負荷の加減です。
もしも、上記のような条件でさえ
不安がかなり高まるようなら、更に
ハードルを下げていきましょう。
例えば、以下のように。
・全く乗ったことのない地方の電車の画像を
インターネットで検索して眺める
・Google MAPで最寄り駅の地図だけ眺める。
慣れてきたら、少しだけ拡大し、さらに
慣れてきたら、「ストリートビュー」などで
周辺の画像も見ていく
慣れてきたら、前述のように
実際の最寄り駅イメージを使って、
今度は次第に、以下のような
イメージングをしていきましょう。
・真昼や休日などの最もすいている時間帯から、
徐々に込み具合の上がる時間帯を想像する。
・駅の近くまで行くイメージング
→達成できたら、次は
改札を通って中に入るイメージング
などです。
2)パニック症状の改善には、 少しずつ行動負荷を増やす
【適切なペースを自己モニターすること】
イメージの段階で過度に不安にならなければ、
「朝の通勤ラッシュ時のイメージ」まで
まだ行き着いていなくても、
実際に少しずつ身体を駅に近づける
段階に進んでいってもかまいません。
というのも、
「1から10まで全て、まずイメージング
してからでないと行動できない」
と決めつけてしまうと、それはそれで疲れて
しまう可能性があるからです。
なので、例えば
・まずは真昼 or 休日に、最寄り駅改札前まで
歩いて行き、すぐ帰ってくる
・入場券だけ買って、構内に入って出る経験をする
・各停電車で、1~2駅ぶんだけ乗ってみる
などからで良いでしょう。
なお、
「家族など親しい人と一緒の時のみ電車に乗れる」
というレベルの人は、まず単独行動をできる
ようになることが、社会生活の質を
高めるのに必要ですので、できるだけ
早期から、単独行動をベースに計画しましょう。
そのためにも、まずイメージングの段階から
単独行動を頻繁に行ない、慣れるようにします。
3) パニック障害を自分で治すには
【記録し、繰り返し練習 しよう】
以上のように段階を踏めば少しずつ
不安が軽減し、行動範囲が広がっていきますが、
その過程も含めて毎回、記録しておくことが
非常に重要です。
苦手なことを取り組み続けるのは苦痛なので
ただ漠然と、記録もせずにやっていると
思ったほど進展がない時期とか、
予想よりも不安が強く出て、より低い目標で
引き返して来なければならなかった日
(時々はそういう日もあります、それは
筋トレでも語学学習でも何でもそうでしょう?)
など、「こんなことしてて良いのだろうか」
「自分はちゃんと達成できるのか、ダメなのではないか」
といった不安が湧いてきた時にも
記録を振り返ることで
「全然進んでないと思っていたけど、
確かに1ヶ月前と比べれば、行動できる範囲が広がった」
「以前よりは駅の近くにまで行けた」
など、ポジティブな成果も思い出し、
勇気を得ることができるのです。
ですから、コツコツと行動療法=自己訓練
を続けていきましょう。
そして、また以前のように自由に行動できたら
どんな良いことがあるのか(そのために今
訓練しているわけなので)も書き出しておき
それをモチベーションにして、前に進んでいきましょう。
パニック障害の自己治療に迷った時には、この基本方針に立ち返る
訓練は数ヶ月程度はかかるものなので、
時にはやる気が低下したり、不安が
強まったりする時期も普通に出てきます。
そんな時には、パニック障害を自分で治すコツ
の末尾で書いた基本方針を読み返してください。
念のため、以下に再掲しておきます。
・治療ゴールは症状をなくすことではなく、
症状があってもそれと折り合いながら
目の前の必要な行動(電車に乗る、仕事にいくe.t.c. )
をできるようになること。
・身体症状はあくまでも
心理ストレスの転換症状であり、
身体症状そのもので死ぬことはないことを思い出す。
・身体症状が強まった時には、
心理ストレス対処法が
なおざりになったからだと認め、再度
自身の内面にしっかり取り組むこと。
ホリスティック(※)精神科医として、できるだけ薬を使わずメンタル改善する方法を様々に模索し、相談者にご提供してきました。このブログではその中でも特にアート(特に絵画療法)のエッセンスを通じてあなたが自己ヒーリングできるように工夫した情報を発信していきます。
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※ホリスティック:「統合的、総合的な」という意味。ここでは薬物療法オンリーの従来型精神医学の限界を突破するために深層心理学、催眠療法(ヒプノセラピー)その他のスピリチュアル、アロマセラピー、そして精神症状を改善するエビデンスのある分子整合(オーソモレキュラー)栄養療法を通じてメンタル不調を改善することを指します。
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