スピリチュアル・エマージェンシー:それは精神病か、魂の成長か

スピリチュアル・エマージェンシー:それは精神病か、魂の成長か【ホリスティック精神科医が解説】

「スピリチュアル・エマージェンシー」(以下、SEと略記します)
という用語はご存知でしょうか?

かなりスピリチュアルに詳しい人や、瞑想を既に深く実践してきた人、
あとは瞑想やエネルギーワークなどに関わった結果、
それまでとは体調や気分が変動してきて不安になって、
いろいろ調べてみた、という人を除いて、
まだあまり知らない人が多いのではと思います。

SEは、古くは仏教での修行中等に現れる
「禅病」とか「魔境」ともいわれ、

・仏や神、あるいは悪魔のようなイメージが
見えたり、その声が聞こえたりする

・自分が幽体離脱したり、千里眼(透視)や
予知などの感覚が出てきて、
それまでの普通の三次元的現実感が崩れてしまう

・身体の中をそれまでと違う種類や強さのエネルギーが
急激に流れるため、例えば背骨に火がついたように
熱く感じたり、頭痛や吐き気、冷や汗が出るなど
自律神経系の乱れによるとみられる諸症状が出る

こういった現象を指します。

特に断食や睡眠不足、その上での過酷な肉体的修行
などで数週間あるいは数ヶ月以上も心身に
強い負荷をかけ続けた場合に、起こりやすいとされています。

あとは、自身や身近な人が事件や事故に遭うなどして
著しいストレスを受け、自分の人生の存在意義が
急激に混乱しわからなくなった、
といった場合に起きやすいようです。

またSEは、こうしたネガティブと見える現象だけでなく、
自分を救ってくれたり励ましてくれるような声とか
自分は特別な使命を帯びた人だ、といった高揚感を
主体とする場合もあります。

しかしほとんどの人はそうしたことが
(まれながら)人生に起きうるということを知りませんし、
それは医療関係者も同じです。

このため、SEが
人生の大きな節目における一時的な混乱であり、

正しく対処すればSE経験前よりも本人が成熟し
人生により深い意義を見出せるようになる可能性がある
という貴重なタイミングであることに気づかず、

通常の精神疾患(主に統合失調症)へ行なうのと
同じ対処法――つまり抗精神病薬の大量投与、
(著しい興奮や自傷他害の恐れありと判断された場合は)
精神科病棟への強制入院、といったことになり、

本人やその家族がその後、大いに苦しむ、
ということにもなりかねません。

実際にSEの人はどのくらいいるのか

わたしは1992年に大学医学部を卒業し精神科医となりましたが、
この四半世紀の臨床活動で、SEらしき人からの
相談を受けたのはほんの数人で、しかも

実際に対面で具体的な相談をお受けする前に
一般的な助言で自分でそれなりに改善できたり、
補助的に医療機関で軽い精神安定剤をもらう程度で
落ち着いたので、SEとしてもまだ軽症の事例だったと思われます。

つまり幻覚妄想が著しく、それに突き動かされて
異常な言動をしてしまうような、
緊急入院が必要な事例にはまだ遭遇したことはありません。

しかしこれも、もしも私が精神科救急の現場に
長く勤務していたら
もっと遭遇していたかもしれないですし、
教会をはじめとする宗教団体内での相談事例の方が
そうした事例が多いのかもしれません。

逆に、「自分はSEだと思う。相談に乗ってほしいので
カウンセリングの予約をしたい」と昔、
個人カウンセリングルームを開業していた頃には
ポツリポツリと相談メールが来たことがありますが、

そのほとんどはお会いするまでもなく
おそらく統合失調症と思われる事例でした。

しかし残念ながらそういう事例ほど、ご本人は

「神の天啓が降りてきた」
「自分は人類をアセンションさせるためのリーダーとして活動するべきだ」
「行く先々で自分に特殊なメッセージが『シンクロニシティ』として示されるのがわかる」

と主張し、こちらがまずは医療機関を受診するよう
助言しても耳を貸してくれません。

幻覚妄想がひどくなり頭が混乱し、
自殺未遂を起こしたりした場合は
精神科救急に運ばれて医療を受けることができますが、

その時の担当精神科医がたまたまスピリチュアルに造詣が深く
かつ精神科医としての臨床経験もある程度積んでいるという、
非常にまれなケースに当たらない限り、

この患者さんが本当に精神病なのか、
それともSEなのかを判別し
それぞれに最適の対処をする、
というのは至難のわざです。

幸いに、といってはなんですが、
精神科救急に幻覚妄想で運び込まれる患者さんの
95%以上は実際に精神病レベルです。

これは統合失調症だけでなく、例えば
アルコールやドラッグによる精神病症状や、
大怪我や手術後、感染症などの身体の要因からくるもの、
極度の栄養不足や不眠、脱水、高熱
といった要因のものも含みます。
あと、特殊なタイプのてんかんでもそうなりえます。

 

本当にSEの場合の対処法は

ただ、わずかながら本当にSEで、
精神病ではない方もまれにおられます。

そういう人には、安心して休んだり、
眠ったりできる静かな個室や、
温かく消化の良い食べ物、
信頼できる家族や医療スタッフとの人間関係で
体力気力を回復させることが、
まず優先される対応です。

SEにおいては、自分自身や人生、
世界に対する視点が急にガラリと変わり
非常にとまどうので、それによる興奮と不安で、
不眠や恐怖感が出ることも珍しくありません。

適切に対応すれば症状が強く続くのは
数時間から数週間以内のことが多いですが、

その間の対症療法として、一時的に
睡眠薬や精神安定剤を上手く使い、
良い睡眠を確保できるようにしてあげるのは
とても大切な要素です。

そしてある程度落ち着いてきたら、
グランディングとスピリチュアル世界では
いわれることをするのが良いです。

これはつまり「地に足をつける」という意味で、
魂とか神とか宇宙エネルギーとか、
そういう概念的なことで頭の中が
いっぱいになってしまい、

動物としての自分のケアが
おろそかになってしまいがちなので、
しばらくの間は自分の肉体ケアを
優先して集中的に行なう、という意味です。

具体的には

・バランスの取れた食事を摂る
・運動や家事、雑事、畑仕事など身体を使う活動を一日の半分以上する
・入浴などでリラックスする
・他人と世間話するなど、人間関係を保つ

といったことです。

昔、分析心理学を創立した精神科医のユングは、
一時統合失調症の危機に陥りましたが、自身でそれを自覚し
毎日、木を切り出したり石を運んで来て積み上げるなどして
いくつもの家というか、塔のようなオブジェを作り続けた、
という有名なエピソードがあります。

このように心の内面が混乱している時こそ、
外面的・肉体的な活動を増やすことで
平常心を回復しやすくできるのです。

現在でも統合失調症患者さんのデイケアでは
簡単な創作物作りをしたり、レクリエーションとして
簡単なスポーツを皆で行いますが、
これもグランディングの観点から、適しています。
この点では、精神病もSEも対処に変わりはありません。

SE独自の、その後の経過
【人生がランクアップする可能性】

ただ、SEの場合、それが正しく本人に認識され、
SEの危機を上手く乗り越えられると、以下のようになることが
精神病の場合とは違う転帰だといえます。

その① この世界の仕組み、成り立ち、因果関係が理解できるようになり、
自分の死を含めて、今後の人生が怖くなくなる。

その② 過去の辛かったことの意味も納得できるようになり、
それらを含めて感謝できるようになる。

その③ 誰に対しても愛や慈悲を感じられるようになる
(まあ、SEになったその個人のその時点の魂の成長度合いによっても、
 その程度は結構まちまちですが)。

その④ 原則として、(数週間から数ヶ月以内に)薬は不要になる。

なお、SEの前後に、超能力的なものを体験することがあります。
例えば予知とか、テレパシー的なものです。
ただ、これらの多くは一時的なものですし、
そもそも魂の成長の本質とは何の関係もありません

喩えていえば、普段何の運動もしていなかった人が
急にダッシュでランニングしたら筋肉痛を起こしたり
肉離れしたりしますが、
普段から運動をできてている人は筋力も心肺能力も強くなっているので
少々の負荷では別に動じません。

同じように、本当に魂のレベルが成長してきた人では
直感が冴えたり、本能的に危機を避けてベストな道を選んだりできますが
必ずしもあからさまな「天の声」やら「千里眼」的な経験は
しない人も多いです。

それでも日々余計なストレスに振り回されず、
運命の流れを信頼し、穏やかな明るさと安心感を持ちながら
自分の人生の目的を果たそうとします。

未熟な人がSEになると・・・

逆に魂の成長度がまだ未熟な人が部分的にSEを経験してしまうと
「自分は神のような力を授かった、特別な存在だ」
「教祖として、世の人々を導くべきだ」
などと、過剰に自分をすごいと思いこんでしまいます。

これを「自我の肥大」といいます。
つまり、自我がバブルのように膨れ上がっている状態ですね。

それが極端になると
「自分のこの教えこそが唯一の正しいもので、
他のことを信じている人たちは邪教で、
人類のためにならないから、抹殺すべきだ」
という、極端な思想にもなりかねません。

1995年のオウム真理教の地下鉄サリン事件などが、
まさにこのパターンでしたね。

そんな気持ちで作った教えでは真の意味で周囲を幸せにできないですし、
本人がまだかなり未解決の欲求不満や恐怖感を抱えているため、
かえって精神病の方向に進んでいってしまうこともあります。

本当に魂的に成長・進化した人は、
様々な価値観や信念で生きる人を見ても
「彼らは彼らなりに一生懸命なんだろうなあ。がんばってね」
というスタンスで、つまりかなり心が寛容です。
余裕があるのです。

なので、ある人が本当に魂的に進化しているかどうかは、
普通にその人の言動を見ていて、
穏やかで安定的、寛容度が高い、
という点で見ていけば良いと思います。

統合失調症の人に催眠療法やイメージワークを勧めないわけ【リスク高い】

ではここで、かつて私がご相談に乗った
事例についてお話しましょう。

その方は自分が統合失調症であると認識し、
長年継続的に少量の抗精神病薬を服用し、
特に服薬してからはもう長い期間
幻聴や妄想もなくなっていたという50代の男性です。

既に自分の会社を長年、無借金で経営し続けている、
とてもしっかりした方だったのですが、あるとき、
「症状が出なくなったのは良いんだけど、自分の人生の目的とか、
生きがいとか、本当に何を好きで、今後のライフワークを何にしたいのかのヒントにしたいので、催眠療法を受けたい」
とご相談に来られたことがあります。

一般に統合失調症の方や、ある種の発達障害系で
ストレスがかかると精神病的になるタイプの方には、
催眠療法は使わない方が良い、とされてきました。

催眠療法は一般の心理カウンセリングに比べて、
割と急速に心の深い所に――いわゆる
潜在意識レベルにまで入り込んで
問題のきっかけやその改善策を探る、という方法なので、

統合失調症など、自我構造が病理学的に「脆い」、つまり
かなりデリケートで傷つきやすいとされる疾患では、
催眠療法はもちろんのこと、
その前段階のイメージ療法やリラクゼーションでさえ
避けるようにしていました。

しかし先程の社長さんはこのような説明を聞き、理解を示した上で
「それでも、ちょっとしたリラクゼーション程度で良いから、
ぜひ体験してみたい」
と、強く希望されました。

このため、主に身体のリラクゼーションをしやすくなるような
イメージ誘導を、しかも深くなりすぎないように調整しながら
行なったのです。

セッションそのものは順調で、この方は
いつも知らずしらずのうちに全身を義務感と責任感で
緊張させがちだったのがリラックスでき、

「久しぶりに、ちょっとだるくなるくらいリラックスできた。
そういえば脱力するって、こういうことだったよな、と思い出せた」
と、喜んでくださいました。

それで次回、もう少しだけ心の内面に踏み込んで、
ご本人が希望しているライフワークや生きがいという
テーマについてセッションをするために
予約をいただいたのですが、

当日来られた時にお話をうかがった結果、
催眠療法やイメージ療法は中止することとなりました。

セッションの翌日から、数年ぶりに
幻聴が再発してしまったそうです。

もちろんすぐに薬をのみ、不安時用としてもらっていた
追加の安定剤ものんで、
2-3日後にはもう、幻聴はまたなくなりました。

しかしご本人も
「心の奥深くを探るのは、やはり負担になるようなので、止めておきます」と、残念そうながら、はっきりといわれました。
私も、その判断が妥当だと感じました。

このように、統合失調症やそれに近い病態の方は、
脳機能上というか、心理構造上というか、その特性によって
暗示やイメージ誘導は諸刃の剣で、
使い方を謝ると精神病症状を悪化させるおそれがあるので、
その見極めと判断はとても重要になります。

SEについてのお勧め図書

最後に、SEについて参考になる本を2冊、
挙げておきますね。

1冊目は
『スピリチュアル・エマージェンシー――心の病と魂の成長について』
という本で、著者はチェコ生まれの精神科医で、後に
アメリカでトランスパーソナル学会を設立した人です。
SEの定義、事例、対処法などについての
古典的書籍となっています。

2冊目は『私を変えた「聖なる体験」』という本で、
かつて日本トランスパーソナル学会を設立した
精神科医の安藤治先生による著書です。
この本では、実際に著者自身がインタビューした
11例のSE経験者について詳しく述べられています。

『スピリチュアル・エマージェンシー――心の病と魂の成長について』
『私を変えた「聖なる体験」』

あと、今回の内容の動画もアップしていますので、
「ながら聴き」したい方はそちらもどうぞ。

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ホリスティック(※)精神科医として、できるだけ薬を使わずメンタル改善する方法を様々に模索し、相談者にご提供してきました。このブログではその中でも特にアート(特に絵画療法)のエッセンスを通じてあなたが自己ヒーリングできるように工夫した情報を発信していきます。 ーーーーー ※ホリスティック:「統合的、総合的な」という意味。ここでは薬物療法オンリーの従来型精神医学の限界を突破するために深層心理学、催眠療法(ヒプノセラピー)その他のスピリチュアル、アロマセラピー、そして精神症状を改善するエビデンスのある分子整合(オーソモレキュラー)栄養療法を通じてメンタル不調を改善することを指します。