メンタルセルフケア記事の後半 その1<各改善法の詳細>

記事の文字数が増えるにつれてブログが重くなり
なかなか更新できなかったりエラーが出ることが続いたため
後半記事を作ったのですが、それすらも追記困難になるほど
コンテンツが増えてきました。

そのため後半記事をさらにいくつかに分け、こちらのページでは
<各改善法の詳細>専用として新たに設定しました。

ちなみに
前半記事:前半記事その1前半記事その2:セルフ・コントロール①前半記事その2:セルフコントロール②

後半記事: その1<各改善法の詳細>その2<おすすめ情報源>
その3参考図書①<栄養療法>その3参考図書②<精神医学・心理学>その3参考図書③<スピリチュアル> 、その3参考図書④<その他> 
です。

各改善法の詳細

ここからは、心理学・心理療法の発展に伴って出てきた治療法で、
主に1人でも取り組めて効果を上げられる手法をいくつかお伝えします。
はじめに項目を列挙すると、以下となります。

(1)良いこと日記、感謝日記
(2)筆記開示(書き出しワーク)
(3)マインドフルネス
(4)弁証法的行動療法(DBT)
(5)アクセプタンス・アンド・コミットメントセラピー(ACT)

順にご説明します。

(1)良いこと日記、感謝日記

同じようなストレスを受けたとき

その出来事を恨み、怒ったり、その出来事に巻き込まれた自分を
「不運だ、ついてない」と位置づけ
「だから自分の人生はろくなものじゃない」
という解釈(認知)をする人は、そのまま落ち込みや不安がひどくなり

うつ病その他の精神疾患にまで進んでいきやすいでしょう。

それに対して、その出来事の中でも、良かった点、マシだった点に注目する、
つまり「不幸中の幸い」を見つけ出し、そのことに感謝し
「だから自分はついている」という意味づけをできる人は回復が早く、
むしろ「不幸な出来事」を経験する前よりも心が成長し
強くなり、周りの人々への寛容性が増すので対人関係も良くなります。

落ち着いた精神状態でいる時間が増えるのでその結果、免疫力も上がり、
おかげで心身の健康状態も改善しやすくなる、
といった多くのメリットを手にします。
つまりある意味、「転んでもタダでは起きない」のです。

つまり、ストレスを受けた人がどのくらいダメージを受けるかは
ストレスそのものではなく、そのストレスを当人がどう意味づけ(解釈、認知)するかで決まるのです。

これがいわゆる「認知行動療法(CBT)」のメインテーマです。

CBT そのものについては一般向けの教科書やワークブックが多数出ているので
詳しく学びたい人はそうした書籍で自分に合いそうなものを1冊書い、取り組んでみると良いと思います。

しかしそこまですぐにはしなくても、毎日の生活の中に組み込めて効果も高い手法があります。
その1つが「ポジティブな内容の日記を書く」ということであり、具体的には
「良いこと/感謝日記」を書くことです。

ポジティブ日記の書き方

その日にあった良いことまたは感謝できることを3つ(あるいはそれ以上)
書きましょう。
その際のポイントは、「良いことや感謝できる物事とは、ほんのささいなことも含む」ということです。

例えば
・昨夜はよく眠れた
・食欲がある
・良い天気だ
・身体がどこも痛くなく、スムーズに動ける
・電車が時間通りに運行している
といったことです。

「なんだ、その程度のこと」ともしあなたが感じたとしたら、
あなたは不安や落ち込み、イライラや恨みを感じやすいはずです。

うつや不安といったメンタル不調になりやすい人は、
物事のネガティブな面に注目し、ポジティブな面は「そのくらい、当たり前」とみなしがちです。

そうした偏った視点(認知)では、日々が苦痛に満ち、逆に楽しいことや喜びはめったに感じられない、という人生になってしまいます。

例えば上記のリストをひっくり返してみてください。

・昨夜はほとんど眠れなかったので起床がつらい、
 朝からぼーっとして思考困難

・食欲がないので食べる楽しみがない、それどころか吐き気でつらい

・土砂降りの悪天候だが出勤せねばならない

・頭痛(腹痛)がする、寝違えたらしい首が痛くてまともに動かせない、
 ぎっくり腰でちょっと動くのも苦痛、関節痛や筋肉痛で着替えや洗面
 といった日常生活もいちいち痛い

・電車が止まり、振替の電車やバスが混みまくり、
 何時間も次のバスを待って、あるいはすし詰めのバスの中で
 立ち続けなくてはならない

すると途端に「普通」の生活を進めていくだけでも大変になることが
わかるでしょう。

このように、ネガティブな認知に偏っている人が「当たり前」と感じていた
ものを失って始めて、「それらは当たり前ではなく、恵まれていたのだった」
と気づくのです。

こうして、ネガティブ思考の人は病気になる

しかし残念ながら、ネガティブ認知の人はこうした経験をした際にも
「ああ、普段の生活がいかに恵まれていたかがわかった!
 今度から、なんでもないような日常生活にも感謝しよう」
とは、なかなかなりません。

「こんな目に遭うなんて、自分はなんて不運なんだ!」
とイライラし、状況を恨み、自分の人生を呪う、
というほうに思考してしまいがちです。

それが何年も続くと健康を害し、例えば大病で入院するとか、
リストラされるなど、より大きな「不運」を経験する可能性を高めます。
そこで認知を修正できると、「不運」な体験のおかげで自分が成長できた、
と考えることができるようになります。

これに対して、ポジティブな認知をできている人は、前述のポジティブなリストのようなことがあったときにはそれをきちんと「素晴らしいこと、ついていること」と受け止め、感謝することが習慣化しているのです。
その結果、心が安定し、自身の健康状態も、対人関係も良くなるのです。

で、ネガティブ認知が習慣化している人がそれをポジティブ認知に修正して
いく方法が「良いこと/感謝日記を書く」ことなのです。

その日あった良いこと――ほんのささやかで日常的なことでも十分です――を思い出し、列挙していきましょう。

ネガティブ認知の人は最初のうちは、ネガティブなことは山のように思い出せるのに、ポジティブなことは1個も思いつかない、という場合が多いです。

その場合は、前述したポジティブリストのような、普段自分が「当たり前」と思っていることを書き出すことから始めましょう。
当初は「このくらい、当然じゃないか。書くほどのものじゃない」
という思考が邪魔してくるでしょうが、相手にせず、ともかくも3個以上は
書くようにしてください。

その際、できるだけ紙のノートに書くのが効果的です。
スマホやパソコンに書くのも、全然書かないよりはマシですが、
紙に書くのに比べると効果が劣ります。
それは紙とペンといったアナログな手段を使ったほうが、
脳の領域が広く活性化されるからです。

そして良いことをたくさん書き出すほど、かつ、個々の内容について
細かく書き出すほど、メンタル改善効果が強まることがわかっています。

どうしてもその日のことでは思い当たらない、
という場合は過去のことでも良いです。

例えば
・希望校に合格して嬉しかった日のこと
・普段仕事で忙しい父親が、初めて運動会に来てくれて、
 一緒に過ごせて嬉しかったこと
・自発的に食後の皿洗いをしたら、母親にホメられたこと
等々、何でも書いてみてください。

日記の書き方、考え方については、以下の記事もご参照。

<関連記事>
認知行動療法やカウンセリングを受けても改善しない人が多い理由
「反省」のし過ぎは不幸をもたらす

(2)筆記開示(書き出しワーク)

悩み続けるのは無意味で非生産的

これは(1)の発展形ともいえますが、こちらはむしろ日々の嫌なこと、
不安なことについて細かく書き出す、というものです。

「えっ、ネガティブなことを詳しく書いたりしたら、
 ますます嫌な気分になって逆効果なのでは?」
と思われがちですが、実際はその反対です。

メンタル不調が慢性化している人は、毎日の時間のほとんどを
過去への怒りや恨み、あるいは今後への不安や恐怖心に縛られています。
具体的には、過去や未来のネガティブなことを毎日何十回、何百回と繰り返して思い出し、頭の中でリプレイ(再生)し続けているのです。

つまり堂々巡り思考しているのですが、それによって何か改善策を
思いつくことはないですし、成長につながる気づきを得ることもありません。

それなのに永遠に堂々巡り思考をしている理由は、考え続けることで
何か解決策を探している気になっている、何か良いヒントが思い浮かぶのではないかと感じ、止められないのです。

逆に考え続けるのを止めてしまっては
「問題から自分は逃げているのでは」
「何かとんでもない悪いことが起こるのでは」
と恐れています。

しかし、冷静に振り返ってみてください。
今まで嫌なことについて堂々巡り思考した結果、
具体的な良い解決策か改善策は、思いつけましたか?

堂々巡り思考が悪いのは、単に解決に役立たず時間の無駄だ
ということだけではありません。

堂々巡り思考をすればするほど、かえって怒り・恨み・不安・恐怖が強まり、
精神エネルギーを消耗するという逆効果になってしまい、
非常に非生産的な行為だからです。

つまり堂々巡り思考をしないようにすることは、「逃げ」ではないどころか、
もっとも生産性が高く、メンタル改善に効果が高いのです。

筆記開示(書き出しワーク)の具体的やり方

では、どうすれば堂々巡り思考を止められるかというと、
これが筆記開示(書き出しワーク)です。

心(頭)の中で考えているだけだといつまでも終わらず、延々にループ
してしまいますが、その内容を紙に書き出すことで「見える化」できます。
つまりある程度心理的距離を置いて客観的に見られるようになるのです。

やり方には、いくつかコツがあります。

まずポジティブ日記と同様、紙に書くほうが効果が高いです。
書いたものは、後で二度と見たくない、あるいは家族などに読まれたくないと感じる場合には、十分書き出したあと、細かくちぎって捨てると良いでしょう。
これは、誰にも見せるものではありません。

一方で、それ用のノートを決めて書くことで、書く習慣が付きやすいことや、
数ヶ月~数年後に見返して自分の成長を確認できるという
メリットがあります。
どちらを選んでもOK です。

ただ、筆記開示は基本的に、毎日行ってください。
特にネガティブ感情が強い間は毎日行なうことで効果を感じやすくなります。

書く時間帯は概ね一日が終わった午後の後半以降が良いでしょうが、
嫌なことがあったとか不安に襲われた、というタイミングでその内容を書く、
というのも効果的です。

逆に就寝の直前に書くと多少神経が高ぶったり、書いた内容の記憶が
睡眠時にも引き継がれる場合がありますので、
遅くとも就寝の1~2時間前には書き終えられるような時間帯がお勧めです。

また、特に自分の心に向き合うことに慣れてない人や、
書くことをあまりしてこなかった人、語彙が少ない人は、
最初はなかなか書く内容が思いつかなかったり、
詳しく描写できなかったりします。

その場合でも1回につき8分間以上。かつ連続して4日間以上」は必ず書くようにしましょう。
これが、筆記開示が効果を発揮するための最少の時間数です。

8分間、できるだけペンが止まらないように集中しましょう。
そのためにもスマホは別の部屋に置いて視界に入らないようにする、
「機内モード」にするなどして着信に気を散らされないようにする、
というふうに環境を整えてから、取り組みましょう。

何も思い浮かばないなら「何も思い浮かばない」と、書きましょう。
8分間ずっと「何も思い浮かばない」と写経のように書き続けることになっても良いです。

「こんなことバカらしい、効果なんてあるのかな」
「こんなことでメンタルが改善するなら苦労しないよ」
という思考が浮かんだなら、そのことをそのまま、
紙に書きつけていってください。

堂々巡り思考にも、スマホにも気を散らさず、紙になんとか自分の気持を
絞り出して書こうとしているうちに、徐々にいろんな思考、感情、記憶、連想といったものが浮かび、書けるようになっていきます。


<参考図書>

<関連記事>
トラウマさえも、あなたの成長チャンスになる

 

(3)マインドフルネス

マインドフルネスは実用的・生産的なスキルである

2000年代に入ってから、海外そして国内でも、マインドフルネスについての
関心が高まり、理解が広がりつつあります。

その少し前までは「マインドフルネス瞑想」と聞いただけで
「瞑想?!宗教もスピリチュアルも苦手だね」
と食わず嫌いの人も多かったものですが、

今やインターネット業界の巨人たち――グーグル、フェイスブック、アマゾンなど、名だたる企業が、もう長きにわたり、マインドフルネス瞑想や意図的な気分転換を社員に推奨しています。

なぜならマインドフルネスを定期的に実践している人の方がメンタルが安定し、集中力や創造性が高まり、結果的に会社の生産性が上がることがわかっているからです。

情報源としても書籍だけでなく、多くのYou Tube チャンネルにて
マインドフルネスの解説や、動画を聴きながら一緒にやってみることのできる
ものが配信されるようになってきて、マインドフルネスがぐっと身近なものに
なってきました。

マインドフルネスとは、いってみれば「心の筋トレ」
のようなものといえます。

人は起きている時間のほどんどを、過去か未来のことを繰り返し考えており、
しかもその大部分がネガティブな内容です。
だからうつや不安やイライラをしょっちゅう感じることになるのです。

逆にスポーツなり、読書なり、映画なり、あるいは日常の家事や仕事に対して本当に「今、目の前のこと」に無心に集中できている時には
気分が穏やかになります。

マインドフルネスは「今ここ」に注意を集中するための
非常に効果的なメンタルトレーニングになります。

代表的なものは
「自分の呼吸に伴なう身体の感覚に集中する」
「呼吸を数える」
といったものです。

マインドフルネスに取り組むコツ

呼吸に集中しようと思っても、最初は1分も経たないうちに
過去や未来のことが思い浮かびます。
あるいは「こんなことをやっても意味がないのでは?」
などの、批判的思考がやってきます。

そうした時、最初のうちはすぐにその思考内容に入り込んでしまい、
そのまま何分間も、いつものネガティブ思考にハマっていたことに
気づくことになります。
そうしたら「あっ、思考に注意が逸れた。呼吸に戻そう」と、
呼吸に戻すのです。

またちょっとすると「退屈だ」「周りの音がうるさくて、集中なんかできないよ」といった思考が湧いてきます。
無自覚でいるとまたその思考内容に深入りしていくので、
できるだけ早く、また呼吸に注意を戻します。

これを、何十回も繰り返すことになるでしょう。それが普通です。

マインドフルネス瞑想は毎日30分以上すると心身がリフレッシュされ、
創造性が高まります。
慢性的なうつや不安もやわらぐことが多いです。

ただし、最初から「リラックスするため」「うつや不安感をなくすため」に
マインドフルネスをすると、上手くいきません。

なぜならマインドフルネスは「ただ、今ここに集中すること」に意味があり、
何かを目的とした手段にした途端、効果が薄れるからです。

「何も期待せず、ただ 今ここに集中」したところ、
結果としてリラックスや不安の軽減が副産物として伴っていた
というのが本来の状態なのです。

で、理想は毎日30分以上ですが、最初は難しいでしょうから、
「1回3分間、頻度は『ストレスを感じたとき』」にする、と決めておく
マインドフルネスを日常生活に無理なく取り入れつつ、
効果も実感しやすいでしょう。

参考図書に挙げた『マインドフルネス認知療法ワークブック』ではこれを3分間呼吸空間法」と名づけ、実際に誘導してくれるCDもついていますので、
入門者が感覚をつかむのにとても良いと思います。

また、章末の関連記事もご参考に。

なお、メンタリストDaiGo が開発したマインドフルネスアプリ「メントレ」
では、スマホのカメラに指を置くことで、瞑想中に実際にどの程度リラックスできているかをリアルタイムで測定してくれるので、ゲーム感覚で楽しみながら呼吸集中の練習ができます。
iPhone 、アンドロイド両方で使えます。無料です。

<関連記事>
「マインドフルネス(今ここに集中)」ができる人ほど、どんどん幸せ感を感じられるようになる【毎日その工夫をしよう】

マインドフルネスを活用できない人の特徴
【Q&A】マインドフルネス(今ここに集中)V.S.「将来への計画性」の違い
スキマ時間で毎日ストレス耐性を上げる裏ワザ


<参考図書>

(4)弁証法的行動療法(DBT)

最新の認知行動療法を活用しよう

2021年現在、「認知行動療法(CBT)」と通常呼ばれるものは、
認知行動療法の流れでいうと「第2世代」と呼ばれるものです。

これは「人が受けるストレスの度合いは、起こった出来事よりも
その出来事を本人がどう受け止めたか(認知、つまり意味づけ、解釈)に
よって決まる」、というスタンスです。
なので、起きたことに対して本人が自動的にネガティブに意味づけしてしまう
クセ(自動思考)を意識的に修正し、それになじむように持っていきます。

CBTに対してはその後も研究が積み重ねられ、その結果
2000年代に入ってからはさまざまな応用・発展形が開発されました。

前節(3)マインドフルネスと合わせることでさらに効果を高めた
マインドフルネス認知療法(MBCT)」もその1つで、これは前節の参考図書としても挙げています。非常に効果的な方法です。

その後、弁証法的行動療法(DBT)とアクセプタンス・アンド・コミットメントセラピー(ACT)も開発され、効果が確認されてきました。

これらは「第3世代の認知行動療法」とも呼ばれ、
それぞれに特長がありますが、共通しているのは

・マインドフルネスを併用していること
・ネガティブな自動思考を修正することよりも、それらがあっても
 巻き込まれず、必要な行動をとれるようになるのを重視していること

です。

弁証法的行動療法(DBT)の特徴

なかでもDBTは「苦悩耐性を上げる」、つまりストレスを受けてつらい時に
自動的に(ネガティブ思考だけでなく)ネガティブな行動をとってしまいがちな人が行動化しないように、上手に自己コントロールするための具体的手法を提供していることが特徴的です。

このおかげで、ストレスを受けると自分を傷つける行為、例えば
リストカット、過食嘔吐や、アルコール・ギャンブル・買い物・セックスなどへの依存行為をして紛らわすという反応パターンが身についてしまっている人が自傷行為を起こしにくくなり、おかげで自尊心を上げたり、すぐ壊れがちだった人間関係も壊れにくくなります。

境界性パーソナリティ障害(BPD)
と呼ばれる人たちは上記のような
自傷行為と対人関係破壊が習慣化しているため、従来のさまざまな心理療法では治すのが困難といわれてきました。
しかしDBT では、それらの人たちの改善率も明らかに上げられるのです。

さらにその後の研究により、双極性障害発達障害など、感情の調節が困難なために起きるいろいろな問題を改善するためにも、その効果が認められるようになってきています。

DBT が提供する戦略の主な柱は、以下の4つです。

①苦悩耐性スキル
②マインドフルネス・スキル
③感情調節スキル
④対人関係スキル

順に、簡単に解説します。
より詳しく知りたい方は、末尾の参考図書をお読みください。

①苦悩耐性スキル

ストレスを受けるとリストカットしたり、過食嘔吐、お酒などの物質や買い物・ギャンブルといった行為にふけることで、心の痛みを紛らわそうという
条件反射的行動化が、習慣化している人がいます。

これを続けていると自尊心も下がり、ますますみじめになっていきますし、
仕事や家庭生活にも支障が出る、浪費や借金から貧乏になり、健康も害するといった、人生のネガティブループにハマってしまいます。

そうならないためには、ストレスを受けた際に自動的にしてしまっていた
行動を、より無害なものに置き換え、そちらに条件づけし直す訓練が
必要です。

例えばリストカットしたくなったら

・氷を握りしめてその痛さに集中する
・切る代わりに、同じ場所に赤いマジックマーカーで線を書き、
 嫌な気分を直視する
・ストレスを与えた相手に思い切り感情的な手紙(またはメール)を書く
(実際には送らない)
・筆記開示(書き出しワーク)をする
・HIIT など、短時間だが激しい運動をする
・涙が枯れるまで泣く

これらを、まず先に行なうのです。

これらを実行しても、それでもやはりむしゃくしゃして、あるいは憂うつ感に圧倒されて、リストカットしてしまうかもしれません。

それならそれで、仕方ありません。
ただ、a)ストレス→自傷行為 と直結していたのを
b)ストレス→代替行為→自傷行為 にするよう、忘れずに毎回実行していると、自傷行為にまで及ぶ頻度が減ってくることがわかるでしょう。

自傷行為にまで至ってしまったとしても、より軽度で、短時間で終わらせる
ことができる確率が増えていきます。

大事なのは、a) ではなく b) になるように、忘れないように、習慣化する工夫をしておくことです。

例えば毎日起床時と昼食後と夕食後に「リストカットしたくなったら●●をする」というメモを見るとか、その一文をスマホのロック画面に固定しておくとか、(一人暮らしなら)トイレのドアの内側とか洗面所の鏡など、毎日何回か必ず目に入る場所にメモを貼っておくなどして、忘れないようにするのです。


②マインドフルネス・スキル

これは前節(3)マインドフルネスをお読みください。

③感情調節スキル

自傷行為をはじめとする、ネガティブな行動をしたくなった感情を直視し、
言葉にして表現します。
この③感情調節スキルは、①苦悩耐性スキル とかなり重なり合っている部分が多いので、両方いっぺんに学び、実行するというスタンスでOK です。

なので「ネガティブな行動をしたくなった感情を直視し、言葉にして表現」
というのは、そのまま筆記開示(書き出しワーク)の実施で良いでしょう。

①ではストレスを受けたときの対処法として、より害の少ない代替行為を
しましょうと書きましたが、③感情調節スキルでは、楽しい代替行為を
予めできるだけたくさんリストアップしておき、つらい時にはそこから
1個ないし数個選んで、実行するのをお勧めします。

例えば
・楽しい動画を見て笑ったり、感動できるようにする
・ちょっと良いハーブティーを買ってきて飲む
・落ち着く香りのアロマキャンドルをともす
・公園など自然の多い環境で散歩したり、しばし読書する
・書店に行き、落ち着く自然を写した写真集やかわいい動物の写真集を眺める
・書店内の、普段はあまり読まない分野のコーナーをぶらつき、
 試しに何冊か立ち読みしてみる
・雑貨店に行き、興味をひかれる物を手にしてみる
 
などです。

④対人関係スキル

物事への否定的な思い込み(認知、意味づけ)が根付いてしまっていると、
他の人のちょっとした言動も自分への拒否や批判だと受け止めてしまうため、
良い人間関係が築けない、長続きしないといったことになります。

どんな場合でも
「他人は変えられない、だから対人関係を改善したければ
 自分がまず変わる必要がある」
という法則を受け入れ、自分が変わるように練習を続ける必要があります。

これは「アサーション」あるいは「アサーティブ・コミュニケーション」
として確率されたコミュニケーションスキルがあるので、
それにのっとって、自分が毎日訓練をする必要があります。
相手を責めているうちは、対人関係は良くなりません。

アサーションとは何かを一言でいうと
「感情的にならずに、かつ相手が受け入れやすい形で
 自分の気持や要望を伝える」
というものです。

下記の記事、特に「決めつけ~」がわかりやすく解説していますので
チェックしてみてください。
より詳しい、具体的なスキルの高め方は<参考図書>をご参照。


<関連記事>
「決めつけ(価値判断)」はあなたも他人も苦しめる
自傷行為依存でストレス対処するパターンから抜け出るために
トラウマさえも、あなたの成長チャンスになる


<参考図書>

(5)アクセプタンス・アンド・コミットメントセラピー(ACT)

こちらも「第3世代」の認知行動療法といわれる代表的なものです。
そのエッセンスをまとめると、以下のようになります。

・不快な感情を避けようとせず、それを直視する。
・直視しても圧倒されないためのスキルを学び、練習する。
・常にネガティブな自動思考にふけってしまっていることに気づき、
 そこから離れるためのスキルを学び、練習する。
・自分の人生で最も大切にしたい「価値」は何かを明確にする。
・「価値」に近づくために有効な行動のみを選び、そうでない行動
 (不快感を紛らわせる行動、役に立たない行動)はしないように意識し、
  練習する。

特に
・直視しても圧倒されないためのスキルを学び、練習する。
・常にネガティブな自動思考にふけってしまっていることに気づき、
 そこから離れるためのスキルを学び、練習する。

のための、非常に重要なスキルが「マインドフルネス」、つまり

「今ここ」に集中することです。
これについては、前節(3)マインドフルネスをお読みください。

DBTは境界性パーソナリティ障害を改善できるということで大いに注目されましたが、ACT は「心理療法はほぼ不可能」といわれてきた統合失調症への著明な効果(わずか4時間のセッションをしただけで、その後の再入院率が半分に激減した)を証明した研究があり、その有効性が認められています。
もちろん、それほど病理が深刻でない人が実施しても大いに改善が実感できるでしょう。

ACT が提供する6つの基本行動原則は、以下のとおりです。

①脱フュージョン(ネガティブ思考/感情に巻き込まれない)
②アクセプタンス(受容)
③「今ここ」につながり、集中する
④観察する自己
⑤価値の確認
⑥目標に向かっての行動


ACT については、以下の記事で詳細に解説していますのでご参照を。

ネガティブ感情は避けず、紛らわさないほうが早く脱出できる理由【ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)のまとめ】 

 

分子整合(オーソモレキュラー)栄養療法

メンタル不調は食事と栄養で治せる

一般に栄養療法とメンタルの関係、というと
「バランスのとれた食事をすることで体調が良くなり、
その結果精神状態も良くなるのだろう」
というイメージですよね。

確かにそれは基本としてあります。
お菓子やジャンクフードばかり食べていては、誰が考えたって
ビタミンやミネラル、食物繊維が不足しますし、
油脂や塩分、糖分が過多になることはすぐわかります。

ところが

・野菜、果物を意識的に食べている
・肉や卵は食べすぎないように意識している
・いわゆる「バランスのとれた食事」をしている、という自信がある

という人の中にも少なからず

・スタミナがない、疲れやすい
・原因不明の立ちくらみ、冷え性、頭痛、PMS(月経前症候群)などが続いている

という人がおり、医療機関を受診しても「異常なし」といわれるが、
その後も一向に改善しない、とか

ゆううつ、不安、不眠があり、心療内科受診して睡眠薬や抗不安薬(いわゆる精神安定剤)、さらには抗うつ薬まで処方してもらっても
ほとんど効かないか、一時的な効果しかない

という場合が、少なからずあります。

また精神疾患特に統合失調症やうつ病、双極性感情障害(躁うつ病)には
薬物療法が必須といわれていますが、
既に半世紀以上前に、薬ではなく栄養素でこれらの症状を「治す」ための
栄養療法を開発した精神科医がいます。

彼、ホッファー博士と、ノーベル賞を2度も受賞した世界的化学者
ライナス・ポーリングが共同で開発したのが、今回解説する
「分子整合(オーソモレキュラー)栄養療法」なのです。

以下の記事で詳しい解説と

・実際の食生活はどのようなものか
・この治療法を受けられる全国の医療機関リスト
・お勧めサプリ通販サイト
・お勧め書籍

などを載せていますので、ご参照ください。

<関連記事>
メンタル不調を治すために開発された栄養療法の内実
新型インフルエンザにも負けない!栄養で免疫力を上げるコツ
うつなどの精神状態を食事で変える法

<参考図書>

プチ断食

正しい断食で身体も心もリセットできる


(!注意!)この方法はまず、分子整合栄養療法を数ヶ月以上行ない、
栄養状態を改善してから取り組む、という前提を守ってください。

でないと栄養およびカロリー不足、低血糖により

・クラクラする、脳貧血のようになる、疲れやすくなる、頭痛その他の痛み、しびれ感などが悪化する
・イライラ、落ち込み、不安、不眠が悪化する
・記憶力、集中力、認知能力が低下する

など、逆効果になってしまうからです。

どんな自覚症状が分子整合栄養療法で治るのか、そして
検診や人間ドック程度の血液データでも自分の栄養状態をある程度評価するには?
といったことは以下の著書に詳しく書いてありますので、
ご関心のある方はお読みください。

ここ数年は、有名人で「1日1食にしている、その方が体調が良い」
といっている人が増えてきました。
確かにこれは一理あります。

なぜなら比較的長時間の空腹時間を作ることにより

・胃腸を休めることができ、胃腸に回していた血液を脳に回せるので
 意欲や集中力が高まるなど、精神機能が向上する。
 よく眠れるようになる。

・毎日どうしても発生する代謝産物(老廃物)を積極的に排出する余力が高まる

からです。

ただし、1つ注意していただきたいのが、
その貴重な「1食」を糖質中心にしたり、適当なものを食べていたら
効果が激減するばかりか、かえって心身の不調を強めてしまう
ということです。

断食には数日間連続で行なうもの、週末のみのもの、
断食と普通食を1日おきに行なうものなど、何種類もあります。

個人の好みやライフスタイルによって、なじみやすいものを採用すれば良いと思いますが、ここでは
「1日16時間断食し、8時間食事して良い時間にする」
という、「リーン・ゲイズ」という方法をご紹介します。

<関連記事>
断食でメンタル改善? 

これについて他に、手軽に理解できるものとしては
以下のサイトも挙げておきます。

<参考サイト>
https://best-trainer.jp/columns/100023#h338f617780

プチ断食の具体的やり方

ただし、多くのリーン・ゲイズ解説ページは「減量(ダイエット)」と「筋肉をつける(ボディビル)」を目標にしています。
このためカロリー計算や、カロリーに占める三大栄養素(糖質・脂質・タンパク質)の割合を計算するなど、面倒なこともせねばならないような解説となっています。

しかし「メンタル・セルフケア」が目的のこの記事では

カロリー計算は不要(食べて良い時間を制限することで、自動的に摂取カロリーを15%程度減らせるので)
・食事可能時間は自分で自由に決められる(とはいえ、就寝2時間前までには食べ終えるようにする
食事可能時間内なら何回食べても良いが、最初の食事は
 ①葉野菜サラダたっぷり(3-4人前が理想的)や生の果物
 かつ
 ②タンパク質たっぷり
 にし、糖質を増やすのは2回目の食事から。

というルールでOK です。
これで各自がライフスタイルに合った断食ができます。

例えば典型的な日勤会社員なら
「12~20時までの間でのみ食べる」
となります。

フリーランスなどの人なら、1回目の食事を14~15時にする、
というのもありでしょう。

ただしたとえ飲み物でも、50Kcal 以上のものを摂ると脳が「断食終了」と受け止めるので、リーン・ゲイズの効果が出なくなってしまいます。
断食時間中は水、お茶、コーヒー(砂糖もミルクもなし)等のみにしましょう。

その他の注意点としては

・原則として16時間断食し8時間を食事可能時間とするが、
 女性は断食時間を12~14時間に緩めても良い。

理由は

・女性の方が長時間断食で
 クラクラする、だるくなるといったエネルギー切れ症状が出やすい
・負荷をかけすぎると生理不順などホルモンバランスに悪影響が出ることがある

からです。

しかし断食時間が増えても大丈夫な人、そして閉経し月経サイクルを気にする必要のなくなった人は、可能な範囲で断食時間を14~16時間に段階的にでも伸

ばすと、より望ましいでしょう。

なお、16時間以上断食すると身体が自らの筋肉を分解してエネルギーを得ようとしてしまい、健康面で逆効果なので、断食時間は16時間までにしましょう。

リーン・ゲイズを開始して2週間後くらいから
睡眠が改善することは、多くの人が経験します。
寝つきが良くなり、眠りが深くなるのです。
このおかげで睡眠薬を減らせたり、離脱できたりもします。

また多くの人が経験しがちな「昼食後の眠気、集中力低下」も大幅に減らせるので、午後~夕方のパフォーマンスが上がるのも実感しやすいです。

<関連記事>
断食でメンタル改善? 


<参考図書>

スピリチュアル

精神安定のためにスピリチュアルが役に立つか?

精神状態の改善のためにスピリチュアルを取り入れるかどうかは、
意見が分かれるところです。

スピ嫌いの人からすれば

「そんな非科学的で根拠のないものを使うなんて!
そんな一時的な慰めにすがって、
後で真実でなかったと気づいて絶望したら、
なおさら精神状態が悪化しかねないではないか。
そういう意味で、道義的にも問題がある」

と、全面否定するでしょう。

たしかに過去、世界の3大宗教であるキリスト教、仏教、イスラム教でも
数え切れないほどの宗教戦争から大量の人が殺されてきましたし、
戦後の新興宗教や、オウム真理教のようなカルト宗教にハマり、
人生を棒に振った人たちがいることも事実です。

その意味で、宗教など何か精神的なものを信じられたら
ただちに心が安定するというものではないことは、明白でしょう。

一方で、よほど心の強い一部の人以外は、
人生の試練に見舞われたときによりどころとなるものがほしいものです。

スピリチュアル否定では安心感を得られない人の方が多い理由

そこでスピ否定派のスタンスとしては

「だからそこで宗教やスピではなく、ある程度徹底的に考え詰めて、
それなりの思想や哲学を採用すれば良いではないか。
実際すでに、多くの哲学者や心理学者による、
人生をどう受け止めて生きていけば良いかの本が出版されているのだし」

というところでしょう。

たしかにそうしたさまざまな思想や哲学にふれて、心から納得し、
その後の毎日を不安少なく行きていけるひとは、
それらを採用すれば良いのです。

しかし多くの哲学書や心理学書の伝える内容については、ほとんどの人が
「なんか難しいし、お固くてなじめない」
と感じていると思います。

スピリチュアルや占いで伝える人生観や運命といったものの中には、
ともすれば読者をただなぐさめ、傷のなめあいになったり、
安直に本人を認め「そのままのあなたでいいのです」と述べ、
本人がより良い人生を手に入れるために何も行動しなくても良い、
そのままなんとなく生きていてOK なんだ、
と伝えてしまっているものもあります。

こうしたスタスンスは本人の自己肯定感も上げず、
人生をより良くしていくための行動も促さないので、
良くないパターンだと思います。

私もこうした安直で受け身になることを促してしまうような考え方には反対です。

しかし一方で、従来の心理学も哲学も、
今の人生をより良くしようとさまざまな視点を提供するものの、
もっと根源的なことには答えてくれていません。

それは

・なぜ生まれてきたのか?人生の目的は?
・なぜ人生にはこんなに試練があるのか?
・死んだらどうなるのか?

といったことです。

スピリチュアル否定者、無神論者は
「死後の世界はあるかどうかもわからない(多分ないだろう)。
そんな不確かなことを思い悩むよりも、
日々の目先の暮らしを良くするためにどう考えてどう過ごすかが、
最も大事なのだ」

というでしょう。
たしかにそのとおりです。正論です。

が、大部分の人は、たとえ現時点で「科学的」には証明されていなくても
より自分が納得でき、人生の意味もわかり、
死ぬことや死後への不安が大幅に減って毎日安心感を感じながら生きられるなら、
そうしたことを可能にする視点・世界観・死生観のほうを選ぶのではないでしょうか。

しかも科学技術が発達し、量子物理学などが解明されていくにつれて
従来は真っ向対立すると考えられてきた「科学」と「スピリチュアル」が
実は同じことを示しているのではないか、
ということが徐々に示唆されてきています。

詳細は以下の記事で解説しています。
まずはスピリチュアルがなぜ人のメンタル改善に効果的なのかを述べ、
ではスピリチュアル否定派が死のことも含めてどうとらえれば、死の不安も減らして生きていけるのかについてもお伝えしています。

スピリチュアルがメンタル改善に「効く」理由

メディカルアロマセラピー

一般にアロマセラピーと呼ばれるもので日本に入ってきているものは
イギリス式で、これはわずかな量の精油(エッセンシャルオイル、以下EO)
を多量の希釈オイルで薄めてマッサージする、お湯やキャンドルの熱で揮発させる、アルコールなどに混ぜてスプレーする、といった使い方です。

これでも香りを楽しんだり、集中力を上げたりの効果はあります。
しかしフランス式はもっと本格的で、
原液あるいはそれに近い濃度を直接皮膚に塗ったり、
内服したり、食事や飲み物に入れて使うことができます。

皮膚や粘膜からEO がより多く吸収されるので
炎症を抑える、かゆみや痛みをとる、殺菌するといった
作用がよりはっきりと出やすくなります。

もちろんその分、よくも悪くもEO の成分による
薬理作用が強まるので、使い方には注意が必要です。
(フランスでは資格を持つ代替療法医だけが
内服等の処方をできます)

浜野が愛用しているEO について、より詳しく知りたい方は
メディカルアロマセラピーについて をご参照。
こちらは不特定多数には公開できない内容を含みますので、
以下のパスワードにてアクセスしてお読みください。
パスワード:mdatheo7  

 

アートセラピー

以下の記事をご参照。

アートセラピーについて
色を使って自分を癒す方法

後半記事リスト

※前半記事:前半記事その1前半記事その2:セルフ・コントロール①前半記事その2:セルフコントロール② 

後半記事リスト

後半記事: その1<各改善法の詳細>その2<おすすめ情報源>
その3参考図書①<栄養療法>その3参考図書②<精神医学・心理学>その3参考図書③<スピリチュアル>その3参考図書④<その他>