前半記事:前半記事その1、前半記事その2:セルフ・コントロール①、前半記事その2:セルフコントロール②
後半記事: その1<各改善法の詳細> 、その2<おすすめ情報源>
その3参考図書①<栄養療法>、その3参考図書②<精神医学・心理学>、その3参考図書③<スピリチュアル> 、その3参考図書④<その他>
目次
メンタル不調の症状別、具体的自己治療法
うつ状態、うつ病
ここではまず、代表的なメンタル不調である
「うつ状態、うつ病」について述べます。
ただ、あらゆるメンタル不調の
根本的な改善法は共通です。
このあと、順にお伝えしていく他の症状の改善法は、
この「うつ状態」改善法を基礎にしたうえで
それぞれの病状に特有の症状などを
さらに改善しやすくするために
つけ加えていくものに過ぎません。
なので、例えば
「自分はパニック発作を起こしぎみだが、
さほど落ち込んではいない」
と思う人でも、まずはこの共通の
改善法を学び、毎日実践していってください。
そうすれば心身の状態が整うので、
軽度の人なら、パニック障害用の文章を
読む前に、改善し始めているかもしれません。
ここでは例として
「うつ状態が悪化して勤務できなくなり、
初めて休職に入った」
というケースでご説明します。
まずは主治医を決めよう
正式に休職に入ったということは、
既にどこかの心療内科に通院をし、
休職のための診断書を書いてもらったはずです。
今後数ヶ月から数年は定期的に通院し、状態を報告し、
改善したら主治医と相談しながら
復職のタイミングと方法を決めていくわけです。
なので、距離的に通院しやすいことが大事なのと同時に
主治医を決めることも、とても重要です。
「同じクリニックに通っているのだから
どの医師でもカルテを見て判断できるだろう」
と思いがちですが、
血液検査や画像検査で明確に白黒が判定しやすい
内科や外科と違って、精神科・心療内科は
本人の態度や話しぶり、顔色といった
実際に対面で観察してないとわかりにくい情報が多くあります。
そしてそれが病状評価や
復職可能かどうかの判断に大きな影響を与えます。
この辺りのことを詳細に書いた記事が、以下です。
メンタル不調からの職場復帰のコツ――自宅でできる「リワーク(復職)・プログラム」
うつ病を自宅で治す「セルフリワーク(復職)プログラム」
うつのバリエーション(気分変調症、双極性障害)では
プラスアルファの工夫も必要
医学的には同じ「気分障害」圏だが、
「気分変調症」と「双極性障害」では
シンプルなうつ病につけ加えて
考慮すべき特性がそれぞれあります。
(1)気分変調症(気分変調性障害)
気分変調症は、普段は重度のうつ状態ははなく
学業や仕事、あるいは主婦としての
役割を果たしながら、それなりに
社会的に適応した生活をできている場合が多いです。
ただ、対人ストレスや環境の変化といった
ストレスがいつもよりも上乗せされ、
それに耐えきれなくなると
典型的なうつ病といって良いような
重度のうつ状態になることがあります。
普段は軽度~中程度のうつ状態なのと
物心ついたころからいつも落ち込んでいる、
対人緊張が強い、何事にも不安が先立ってしまう
といった体験の中で生きてきたため
「この状態は自分の性格なのだ。
だから一生、こうした自分とつきあっていくしかない」
といったつらさ、無気力感の中で
日々を送っている人が多いです。
ただ、こうした人達の状態が「性格」ではなく
「うつ病圏である」とわかってきた理由の1つが
(純粋なうつ病と同様に)ある程度抗うつ薬が効き、
服薬後は別人のように朗らかになったり
微笑をよく浮かべ、穏やかで寛容な
受け答えをできるようになったりする例がみられたからです。
つまり脳内ホルモンの分泌具合が
普段から乱れやすく、これが抗うつ薬や
その他の手段でサポートされると
本人の本来の人の良さ、中立性が
見えやすくなる、と考えることができます。
なのでこうした人は、通常のうつ病/うつ状態の
改善法はもちろん、
長年自分の気弱さや人見知りを
「自分のダメな性格だ」
と思い込んで下がってしまった自己評価を
上げる心理カウンセリングを受けたり、
自己肯定感を上げる
「セルフ・コンパッション(自分への思いやり)」
などを学び、身につけていくことが
特に必要でしょう。
以下の書籍がおすすめです。
(2)双極性障害(躁うつ病)
※最近増えている(ように見える)「双極性障害Ⅱ型」は
診断名として本当に双極性障害なのか、
それよりも発達障害やトラウマ性の不安が混じった
病態ではないのか、といった議論が
医学界で続いているので、ここでは
昔ながらの典型的な双極性障害(Ⅰ型)、
いわゆる躁うつ病についての説明だと思ってください。
。。。。。。
双極性障害は、通常のうつ病以上に
生物学的因子、すなわち遺伝的な体質の
影響を多分に受けます。
このため、心理的アプローチだけでなく
生活習慣を改善して
自分のエネルギーの暴走や
その後の消耗によるうつ状態の再発を防ぐための
自己モニターをかなり厳密に、意図的に行うよう
自分を訓練していく必要があります。
しかし躁状態は本人にとっては
「何でもできる、頭がよく回るし
眠らなくても、食べなくても
エネルギーが湧き上がってきて
いくらでも行動できる。
自分ってすごい!」
と感じられるので、なかなかそれを
手放したくない、という心理が働きます。
その結果、数週間から数カ月後には
再びうつに転じ、消耗状態からくる
ひどい落ち込みに苦しむことになるのです。
躁状態になったとき、あるいはなりかけている
タイミングでそれに気づき、
自己制御できるようになるまでは、
10年から20年、あるいは一生かかる人もいます。
うつの苦しみからようやく脱した後の
エネルギッシュで良い気分と体調を、
わざわざ自分である程度抑えて小出しにするなんて、
誰が好き好んでやるでしょうか。
しかし
・躁状態で健康を害し、お金を浪費し、
対人関係を(おせっかいや過剰な自信による言動で)壊す
・うつ状態で何もできなくなり、仕事も家庭生活も破綻する
というパターンから脱出したければ、
自身のバイオリズムに気づき、受け入れ、
自己訓練していくしかありません。
そのためにも、以下の書籍がおすすめです。
不眠
不眠も、多くの現代人が抱える悩みです。
また悩んでいないにしても、日本は世界でも類を見ないほどの
慢性短時間睡眠の人が多いと、統計研究でわかっています。
睡眠不足や質の低下は、単に眠いだけでなく
・認知能力、判断力、記憶力を下げる
・ストレスに弱くなる
・心臓病、がんの発病リスクを上げる
・ホルモンバランスが乱れ、食欲が増して太りやすくなる
などなど、デメリットがいっぱいです。
そしてこのとき、飲酒するのは逆効果。
お酒は寝つきを良くするものの、
睡眠の質を下げ、中途覚醒しやすくなりますし、
翌日からの落ち込みや不安を誘発しやすくなります。
メンタルクリニックには睡眠薬を
求めて来院する人も多くおられますが、
この後お伝えするような
・生活習慣の改善
・ネガティブ思考にふける習慣の改善
をしない限り、たとえ一時的には睡眠薬で
効果は出たとしても、いずれ再発し
もっと薬をほしくなり、増量すれば
依存症にもなりかねません。
なので不眠が生じたときにはまず
「自分の生活習慣や考え方の習慣の
どこを修正したら良いか?」
という点に注目し、改善していきましょう。
以下の記事で詳細内容を確認できます。
不眠解消法を自分で身につける方法
不眠を認知療法的に治すには
夜勤する人の不眠対処用行動療法
強迫性障害
現代社会は、かなり強迫的であり、また
それを「良し」とする社会です。
そして発展途上国よりも先進国でその傾向が強いのですが、
なかでも日本は、ダントツに強迫的といえます。
この強い強迫性のおかげで世界に類をみないスピードでの
発展や技術向上を実際に手にしてきたので、
強迫的に確認すること、つまり完璧をめざすことは
良いことだ、という価値観が根づいています。
例えば医療や交通機関における
ダブルチェックやトリプルチェックなどが典型的です。
確かにこれらの分野では人命がかかっており
ミスは許されるべきではないのですが、
「そこまでしなくても・・・」
という場面は、やはりあります。
例えば電車が人身事故や自然災害のせいで
運行が5分遅れただけで
「申し訳ございません」
と繰り返し、車内放送されるなどです。
どんな良い価値観や習慣も
いきすぎは害が出てきます。
強迫性障害の背景にある不安は
もちろん完璧主義だけからくるものではないのですが、
強迫性障害の発症と悪化を促進する因子なのは
間違いないでしょう。
強迫性障害を自分で改善するコツ
の中でも書いていますが、
私自身も、もともとの気質が
心配性で不安が強く、一時は強迫症状が
出ていたこともあります。
そして強迫性障害に限らず、例えば
・パニック障害
・社交不安障害
・心気症(ささいな身体症状から、
自分は致命的な病気に違いないと思いこむ)
・摂食障害
・アルコールなど各種依存症
の背景にも、半ば自覚できていない
慢性的不安があります。
今回は「強迫性障害を自分で改善するには」
という内容で、以下の情報をアップしていますので
ご活用ください。
強迫性障害を自分で改善するコツ
強迫性障害と上手く「共存」する方法
<参考図書>
パニック障害
ある日突然、動悸や息苦しさ、倒れそうになる恐怖と
不安の発作を起こし、救急車で搬送されて
病院を受診するも「異常なし」といわれて帰される。
しかし「もう2度とあんな体験はしたくない」
と、苦手な状況(満員電車、途中退席できない会議、
歯医者や美容院e.t.c.)
を避け続けるうちに、次第に社会生活困難となり
気づいたら引きこもり、休学してしまったり
職を失ったりしてしまう・・・。
これらは、パニック障害への初期対応法を
誤ったがゆえの結果です。
パニック障害は現代人に決して珍しくない症状です。
しかしそれを
「身体病であり、検査と薬物療法で治るはず」
と思っている限り、せいぜい一時的に症状を
薬で紛らわすだけで、本当の意味で治りません。
本当の意味で治るためには、以下の真実を知り、
理解・納得する必要があります。
・パニック発作とは、慢性的な心理ストレスが
身体症状に転換されたものである。
したがって、パニック発作で死ぬことはない。
・普段、ほとんど無意識に抑え込んでいる
本音やネガティブ感情を、
しっかり棚卸しし、心理的ストレスを
開放する必要がある。
・症状の克服には、行動療法によって
少しずつ自己訓練していくことが必須である。
以下の記事で、こうした内容を具体的に詳しく述べています。
パニック障害の本質的治療とは
パニック障害を自分で治すコツ
パニック障害を自分で治す行動療法
パニック障害への誤解【その認識のままでは治らない】
社交不安障害
社交不安障害も、現代に非常に多いです。
しかも
・10代前半で発症するため、
内気で対人不安が強いのは
自分の性格だと思ってしまい、このため
治療を受けず、長年苦しんでいる人が多い。
・うつ病などと違って
自然経過で軽減するということはなく、
むしろ年数が経つほど症状が悪化しつつ固定化してしまう。
という特性があります。
社交不安障害が病気だと認識されるようになったのは、
こうした症状で受診した人に
抗うつ薬(特にSSRIといわれる種類のもの)を投与したり、
心理療法を継続することで
明らかな改善がみられたからです。
そして他の不安障害と同様に、治療目標は
「不安をゼロにしようとするのではなく、
不安を抱えつつも、必要な行動はできるようになること」
です。
以下の記事に
・どんな家庭環境だと、社交不安障害を発症しやすいか
・社交不安障害の人が持つ、間違った価値観
・社交不安障害の人にありがちなコミュニケーションパターン
・社交不安障害の自己治療法
などについて詳しく述べていますので、ご参照ください。
社交不安障害を自分で改善する方法
<参考図書>
摂食障害
摂食障害とは
摂食障害(拒食症、過食症)は近代社会で増えている疾患です。
従来は「若い女性のみに発症する」と思われていましたが、
最近は男性でも「ストレス食いで非常に太ってしまった」例は
そう珍しくありません。
また男の子、特に10歳~14歳くらいだと、
命に差し障るほどの拒食とやせになってしまい、
入院になった事例も、何人か経験しています。
女性だと
・生理が止まり、入院しなければならないほどやせてしまう拒食症の人
・拒食症から過食に転じ、食べ吐きを繰り返すことで
やせすぎ体型を維持している人
・拒食はあまりなく、最初から過食。
過食でぽっちゃりするか、
過食嘔吐で通常かやや低体重を維持する人
といった、いくつかの典型的なパターンがあります。
これら3つのパターンにより、ある程度の心理的な違いや
改善法の違いはあるにせよ、それは枝葉部分で、
おおもとの原因は一緒で、以下の点になります。
摂食障害を持つ人のメンタル、典型的3パターン
・自尊心が低く、適切な自己主張や、
自分がこうしたいと思ったことを自発的にできない
・家庭環境が不適切(後述)だったため、
不安が強く悲観的
・遊び心が少なく「べき」「ねばならない」思考が強いので
リラックスして好きなことをして楽しむことができない
摂食障害をきたす「不適切な家庭環境」とは
「家庭環境が不適切」とは、どういう意味でしょうか。
典型的な例を以下に挙げます
(水島広子著『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』より引用、加筆)。
(1)親に存在価値を否定された。
親は最大の味方のはずなのに虐待された、
「あんたなんか産まなければよかった」など存在否定された、
常に他人と比較されてけなされた、など。
(2)努力を正当に評価されなかった。
努力をしてもそれが当たり前のように扱われた、
努力自体を認めてもらえず、結果に対してケチをつけられたなど。
(3)過保護な親に全て先回りして決められてしまった。
このため本人は自分なりの試行錯誤をさせてもらえず、
その結果、自分の判断や行動に対して自信が持てないまま成長してしまう。
(4)自分の意見を表現することを尊重されなかった。
何か意見をいうと「生意気だ」「わがままだ」と却下される、など。
したがって対処法は
・親をはじめとする他者に、適切に自己主張できるように練習する。
・「拒食や過食はその時の自分のストレス度のバロメーターだ」
という観点を常に忘れず、
拒食や過食が強まったときには、何がその引き金だったのかを
その日のうちに考え、ノートなどに書き出す。
つまり拒食や過食や食べ吐きといった症状そのものや、
体重自体には目を奪われないようにする。
・自分が問題のあるコミュニケーションパターンをしていないかを
振り返り、代わりにどう応答したらよかったのかを
ノートに書き出す。
となります。
「問題のあるコミュニケーションパターン」とはどんなものか、
「適切な自己主張」とはどんなものか
については、他の不安障害と共通なので、
以下の記事や書籍をお読みください。
<関連記事>
社交不安障害を自分で改善する方法
<参考図書>
境界性パーソナリティ障害(BPD)
境界性パーソナリティ障害は、アメリカでは1970年代、日本では
1980年代後半から1990年代にかけて特に話題になったメンタル不調状態です。
その多くが同時に「アダルトチルドレン(AC)」と
呼ばれる人たちでもありました。
ACとは、アルコール依存症の親のいる家庭などで育ったり
虐待を繰り返し受けながら育ったために
他人を信頼できないし、自尊心も非常に低い、
そのために極端に不安定な対人関係と、気分の浮き沈みが著しい
といった特徴を持ちます。
2010年代に入ってからはACはあまり注目されなくなり
代わりにADHDなどの発達障害がクローズアップされています。
このように、ブームになるメンタル不調にはその時々で変動しますが、
人間の心理はそんなに短期間で変わりません。
なのでメンタルクリニックに受診される人も
10数年前までは「自分はACなのではないか」という人が多かったのですが
最近は「自分は発達障害なのでは」に変わっています。
しかし根っこにある悩みは変わりません。
それは
①自尊心(自己肯定感)の低さ
②気分の浮き沈みの激しさ
③対人関係の不安定さ
です。
診断基準(参照ページ:https://msdmnls.co/3dz20v6)から概要を
ピックアップすると、境界性パーソナリティ障害の人は
以下の特徴を持ちます。
・常に空虚感を感じており、それを解消するために
いつも他人に愛され、気遣われたいと思う。
・空虚感を背景に、気分の不安定、特に落ち込み、イライラが出やすく、
ちょっとしたきっかけで激怒する。
・出会った人間に対し、100%良い素晴らしい人だと過大評価するか
全くダメな人とかのどちらかの評価しかできず、
ほどほどの中間の評価をして人間関係を維持する、ということができない。
・素晴らしい人だと思っていた人が、少しでも意に沿わない言動をすると
「予想と違って、全然ダメな人だった」と切り捨てる。
あるいは「相手に見捨てられる」との極端な受け止め方をする。
・見捨てられ不安や空虚感が強まると自分で対処できず、
リストカットなどの自傷行為や自殺行動、過食嘔吐、
アルコールや買い物、(不特定相手の)性行動などへの依存で
空虚感や不安感、落ち込みを逃れようとする。
境界性人格障害はこのように重度で激しい症状が10代の頃から
出現・持続しており、心理療法や向精神薬でも
効果は限定的、とされてきました。
しかし2000年代ころから「第3世代の認知行動療法」ともいわれる
ACTやDBTといった新たな心理療法が開発・研究され、
2010年代はその成果が続々と確認されるようになってきています。
もちろん重症なら専門家に個人カウンセリングを受ける必要がありますが、
ACTやDBTの良いところは、中程度までの病状の人なら
一般向けのワークブックを読み、継続的に取り組むことで
自分でも改善可能なことです。
ACTやDBTの具体的な内容や使い方については、
最新の認知行動療法を使って、自分でメンタル不調を治す方法
に書いてありますので、参照してください。
発達障害
2010年代に入って以降、急速に注目され、そのぶん「自分もそうではないか?」とメンタルクリニック受診者が急増している病態です。
実際には非常に広い病像や状態を含み、
一言でまとめての解説はとうてい無理です。
ただ、自分を発達障害と疑っている、もしくは既に診断を受けているとしても、この文章を読んでおられる人ならば障害の程度は軽度で、
主に以下の支障が出ているので、さまざまな情報を検索し
ここにたどりつかれたのでしょう。
代表的なものは、以下のものです。
①物事の優先順位がつけられない。
②マルチタスク(複数のことを平行して行う)が非常に苦手。
③忘れ物が多い、物をなくしやすい。
しかも財布やスマホ、会社の重要書類といった重大なものでさえ、
気をつけていても、繰り返し紛失してしまう。
④時間の見積もりが甘く、また気を散らされやすくて
途中で余計なことをしてしまいやすく、このため
身支度を整えて出発する、といったことが制限時間内にできず
しばしば遅刻する。
⑤オフィスなどで、周囲の物音などが気になって
なかなか集中できない一方で、いったん集中すると
次の予定のために今の作業を止めることができず、遅刻したり
大事な約束を反故に(つまり無断キャンセル)してしまう。
⑥相手の言っていることの、表面的な言葉の意味はわかるが
いわんとしている本質、本音が理解できない。
⑦場の雰囲気が読めず、不適切なタイミングや内容を発言してしまう。
特に③~⑦があると、職場で「できないやつ」と思われたり、
職場の人間関係はもちろん、友人関係などプライベートな
人間関係も誤解を受け、良い人間関係を維持できない、
ということにもなりがちです。
発達障害は双極性感情障害などと同様に、脳の「体質」によるところが大きいので、できるだけ長所を活用して短所は工夫(後述)でカバーし、
社会にうまく適応していけるようになることがポイントです。
【発達障害の人が社会になじむための3つのアプローチ】
(1)実用的スキルをフル活用して長所を伸ばし、短所を最小に抑える
(2)マインドフルネスを習得する
(3)運動療法
1つずつ解説します。
(1)実用的スキルをフル活用して長所をのばし、短所を最小に抑える
①長所をのばす
自分が関心を持てるものにはとことん集中したり、
細かなところにまでこだわって完成度の高い物を作り上げる、
ということは自然にできます。
このためプログラマーとか、(数字に興味が持てるなら)経理とかを
社内で任せてもらえると、高い集中力で仕上げることができます。
また自営業とか副業で、自分が好きな物を作って販売したり
情報発信することが向いている人もいるでしょう。
職場では、可能な限り
・単独ででき、あまり他人とやりとりせずにできること
・期日がゆるく、マイペースでできること
・個室か、それが無理なら机をパーテーションで区切るなど、
他者の視線や気配を減らして集中できる環境
が得られるように、上司等に相談するのも非常に役立ちます。
②短所を最小限にする
まずは自身の脳の特性を理解・受容し、その特性を周りの人にも伝えます。
その際には
「自分はこういう特性があるので、こういう業務や作業は
こういう理由でかなり苦手。
なのでできるだけ、こういう対応をお願いしたい」
と伝えましょう。
代表的な要望としては、以下のものです。
・締切がある業務は、できるだけ早めに、猶予のあるうちに予告してほしい
・既に作業にとりかかっている時に、割り込み作業を指示されると
非常に混乱するので、どうしてもという場合以外は、入れないでほしい。
・入れざるを得ない場合も、思いついた時にいきなり声をかけるのではなく
昼休みや出勤時など、作業から離れているタイミングで伝えてほしい。
・口頭のみでの指示では、内容を理解したり記憶しておくのが
非常に苦手なので、できるだけ書面か、
少なくともメモ書きを示しながら説明してほしい。
これを上司をはじめ、周囲の人に伝えることが、
ADHDをはじめとする発達障害の人がその特性を活かして
最も生産性を上げやすくなり、結果的に会社のためにもなるからです。
また自分自身でも
・約束や予定は、決まった途端にグーグルカレンダーなどに記入する。
・予定が近づいたらリマインダーが自分のスマホに送信されるように
設定しておく。
・「明日の持参物」は今夜のうちにまとめて玄関に出しておく。
荷物が複数ある場合にはカラビナなどでつなげておき、
「1つ置き忘れてきてしまった」がないようにする。
・キーファインダーを活用し
貴重品の紛失を防ぐ。
・特に大事な要件が本日ある、といった場合には、
スマホのロック画面にその情報を設定しておく。
といった工夫をし、気がそれたり、優先順位を失念したり
なくしものをしないようにしましょう。
以下の本も非常に参考になります。
(2)マインドフルネスを習得する
多くの「発達障害」「ADHD」(自分で疑っているレベルでも、実際に診断を受け、薬物療法を開始している場合でも)の大半の人は「多動」は目立たず、
主に「不注意」ないし「注意の偏りや集中力が続かないこと」が
悩みの中心であることが多いです。
※「対人関係で上手くいかない」、「場の空気が読めない」といった症状にも
背景に「相手の発言に注意を向け続けられない」「他の人達の会話中に上の空になり、流れについていっていない」ことがあると考えられます。
ここ数年、徐々に知られるようになってきた「マインドフルネス瞑想」は、
この「自分の注意のさまよい」に気づきやすくなり
注意すべき対象に意識を戻すことができるようになる、
という効用があります。
その他にも、心身がリラックスするので
・落ち込み、不安、イライラ、怒り、悲しみといった感情の軽減
・不眠の改善
・高血圧や各種の痛みなど、慢性緊張が引き起こしがちな身体の諸症状の軽減
といった、多くのメリットがあります。
2010年代からはたくさんの優良な書籍や、一緒に実施してくれるYou Tube も
多数公開されていますので、理論編から実践編まで、
独学でも身につけることが可能です。
私のブログでも以下の記事が参考になります。
「マインドフルネス(今ここに集中)」ができる人ほど、どんどん幸せ感を感じられるようになる
マインドフルネスを活用できない人の特徴
【Q&A】マインドフルネス(今ここに集中)V.S.「将来への計画性」の違い
以下の動画では、不安をはじめとするネガティブ感情から
距離を置くイメージワークを紹介しています。
嫌な思考から距離を置くイメージワーク「冷蔵庫法」
(3)運動療法
2000年代初頭までは、運動とうつ病などの精神症状・精神疾患は
直接的関係はないと、医学界でも思われていました。
運動することで気分転換され、その結果うつや不安などが
多少楽にはなるだろう、でも所詮間接的な効果で、
主な治療法といえるほどではない、という見解です。
しかし2010年に改定されたアメリカ精神医学会の「うつ病治療ガイドライン」に初めて、うつ病への運動療法が有効であると公表されました。
その後の各種研究でも、以下の効果があることがわかってきました。
【運動療法の効果】
①朝散歩をすることで脳内ホルモン「セロトニン」が増え、それにより抗うつ効果が発揮される。
※セロトニンは最近最も多用される「SSRI」と呼ばれるタイプの抗うつ薬が
なんとか活性化しようとしている物質です。
うつ病の人のセロトニンは、かなり減っています。
薬物療法では、患者の数少なくなっているセロトニンの利用効率を上げることで抗うつ作用を発揮しますが、セロトニンの量は増やせません。
それに対して朝日を浴びて散歩することで、脳が自前のセロトンを生産する、
つまり量を増やせるのです。
②筋トレやウオーキングでもある程度のメンタル改善効果があるが、心拍数を上げる運動を週2~3回程度、1回数分から十数分するだけでも不安と落ち込みを明らかに減らせる。
②の運動法は「高強度インターバルトレーニング(HIIT)」と呼ばれ、
「その人の最大心拍数(※)の80~90%」という高強度の運動を
数十秒程度と、その0.5~数倍の休憩時間を交互に行なう、
というのを数セットから20セット実施する、というものが多いです。
(※)最大心拍数=年齢-220
例)30歳なら220-30=190
HIIT については、こちらの記事に解説してあります。
最も効率的にメンタルも身体も強化してくれる運動法、HIITとは
もともとのHIIT には跳躍なども含まれていましたが
集合住宅に暮らす人が多いことを考慮し、最近では
跳躍なしも十分負荷を与えられるメニューを
多くのYou Tube 発信者が提供してくれてます。
例えば以下のものです。
【4分だけ】マンションでも!有酸素より効率よく脂肪を落とそう(HIIT)
【静かにできる】HIITトレーニング。(マンション用)1日10分の筋トレ。
HIITの極め方②70歳でもできる10のHIITトレーニング初級〜中級編
上記4本の動画のうち、2本目までは動画を見ながら一緒にやることで
HIIT ができるようになるというもの。
3本目はHIIT が心身にいかに多くの劇的効果があるかを解説。
4本目は、他では知られていないような、HIIT の応用バージョンを
10種紹介しており、自分の体力や生活パターンに応じて取り入れることが可能です。
3、4本目を、特にフルバージョン版で見ると
もう途中から、やり始めたくてしょうがなくなるでしょう
(実際、私がそうでした)。
運動は全てのメンタル不調に対して効果があります。
その実例集ともいえる本が、アメリカの精神科医が書いた以下の書籍です。
逆に、常にスマホやパソコンなどでインターネットにつながっていないと
落ち着かなくなる、という人はネット依存症です。
もし、あなたの注意散漫・集中困難が子供時代からでなく
最近(特にスマホが普及した2011年以降)悪化しているとしたら
発達障害という生まれつきの脳機能の偏りではなく
健常者なのにネット依存症になっている、と考えたほうが良いでしょう。
もちろん発達障害のある人がネットにハマると
一層急速に重症化しますので
要注意です。
この辺りを、スウェーデンの精神科医が書いた本で、
2020年から日本でもベストセラーになった
以下の書籍で詳しく知ることができます。
発達障害については、運動がそれを「治す」ものではありませんが、
運動によって
・注意力、集中力を明らかに増強する
・その結果、周囲の刺激や、自分の思いつきに振り回されてやるべきことが
後回しになってしまう、ということが起こりにくくなる
・衝動的な怒りやイライラをコントロールしやすくなる
・不安や落ち込みが減る
・上記の結果、対人関係も改善する
といった効果があります。
なのでぜひ、できるところから取り入れていってください。
運動を習慣化することは、あなたの一生の資産となります。
<関連記事>
動かないと、心も折れる【あなたのうつ・不安は外出不足と行動不足から来ている件】
<関連動画>
運動するとうつ病が治る?!
動かないとうつ病のようになる
幻覚のある人
幻聴や幻視といった幻覚がある疾患の代表が統合失調症ですが、
近年は特に若い世代を中心に不安障害圏でも
幻覚(主に幻視)を訴える人が増えてきています。
以下の記事では、統合失調症と不安障害の人に分けて解説します。
統合失調症
「軽症化」してきた現代の統合失調症
昔に比べ抗精神病薬も改善され
「1錠のんだだけでグデングデンに鎮静され、口もきけなくなる」
という処方のされ方は減ってきています。
また、「同僚みんなに嫌われ、嫌がらせされている」
といった訴えは、病気でなくても思い悩む人も少なくないでしょうし、
あるいは
「転居した家がシックハウスで、体調が悪くなった。
自分はもともと化学物質過敏症ぎみだし」
という主訴で内科受診しても、そういうこともあるだろう、と
当初は相手も受け止めます。
このレベルの症状のうちは、本人は不安が強くても
最低限の身の回りのことや、仕事もできたりするので、
周りも精神病を疑うことはあまりありません。
こうした方々は、主に不安や不眠、落ち込みやイライラで
比較的早期に心療内科を受診するでしょう。
2000年代に入ってからは、例えば1980年代と比べても
メンタル不調への偏見がかなり減り、
おかげで軽症のうちにメンタルクリニックを受診する人が増えました。
また2015年から「ストレスチェック制度」が実施され
企業は社員の身体の健康と同様に心の健康状態を年に1度はチェックし
把握しておく義務が生じたことも、良い影響を及ぼしています。
「身体と同様、心も意識して健康を保つ必要があり、
社員の心身の健康を損ねる職場はブラック企業として問題視される」
という風潮が根付いてきたことも役立っています。
このように、本格的な幻覚妄想状態に進行する前に
心療内科を受診する人が増えたおかげで、
比較的少量の処方で治療を始めることができるようになりました。
臨床医の間では2000年ころから
「最近は統合失調症が軽症化しているよね」
といわれるようになったのも、こうした複数の因子のおかげです。
薬物では「根本治療」はできない
しかし薬は「幻覚妄想や興奮、不眠」といった目立つ症状(これを
「陽性症状」といいます)には比較的速やかに効くことが多い一方、
「陰性症状」には無効か、効いても限定的、とは昔からいわれてきました。
陰性症状の代表的なものは、以下のものです。
・自宅に閉じこもり、何もしない。
放っておくと自室にいてゴロゴロしているか、せいぜいテレビ
(現代ならスマホ)を眺めているのみ。
・他人に会うのを極端に嫌う。
・感情表現が乏しく平板で、一見鈍感そうに見える。
・全く孤独でも気にしない。むしろ心地よいと感じている。
といったものです。
陽性症状が取り切れていない場合には、幻聴に向かって独り言の返事を
したり、その「会話」内容なり妄想内容に没頭しニヤニヤしていたりします。
このままではもちろん、社会復帰は望めません。
そのため製薬会社は「陰性症状に効く」のをウリにした新薬を
ここ何十年も開発・発売し続けていますが、ほとんど実用的なものではない、
というのが臨床医の一致した実感です。
栄養療法で精神症状を治療できる
そこで新たな希望になるのが、分子整合医学による栄養療法
(分子整合栄養療法、オーソモレキュラー栄養療法)です。
詳しくは「分子整合栄養療法」の記事
「心を栄養で実際に治せる」
でお伝えしていますが、
ナイアシンをはじめとするビタミンとタンパク質などを、
通常の推奨されている量の数倍から数十倍しっかり入れることで
陽性症状はもちろん、陰性症状も治す、という治療法です。
※統合失調症やうつ病などの実際の事例を含む豊富な情報を
一足早く読んでみたい方は、こちらもご参照を。
うつ病からがんの治療までオーソモレキュラー療法(栄養療法)の実際
以下のサイトからは、全国のオーソモレキュラー療法導入医療機関を
検索できますので、受診希望者は最寄りの機関に問い合わせてみてください。
オーソモレキュラー栄養医学研究所
また、あまり知られていないことですが、
活発な幻覚妄想を薬で急激に消滅させると、患者さんが引き続いて
中程度から重度のうつ状態に陥ることがあります。
これは無意識(深層心理)において幻覚妄想がどういう役割を担っていたのかをわかっていると納得する現象なのですが、
このうつ状態のせいで患者さんは結構つらい思いをします。
本当は深層心理にも精通した心理カウンセラーのカウンセリングを受けるのが望ましいのですが、ただでさえ精神的に消耗している本人にとっては、
あまり実用的ではありません。
これに対しても分子整合栄養療法は大きな力を発揮します。
ナイアシンそのものが抗うつ作用を持つため、幻覚妄想が消えて
ぽっかり空いてしまった心の穴を、
適度な安心感や意欲で補充してくれるのです。
ということは、無気力と対人接触を避けたがる、
前述の陰性症状にもよく効きます。
精神症状改善後はできるだけ早期に社会参加訓練することが、自立人生のために必須である理由
それから、幻聴への取り組み方で大切なことは、
「幻聴内容を信じ込み、没頭してしまう」
という状態から
「幻聴は、自分のストレス度を示すバロメーターである」
という観点に立つ練習をする、ということです。
統合失調症はかなりの部分、生まれつきの脳の「体質」が影響します。
ストレスがかかった時、それが頭痛で出る人、パニック発作になる人が
いるのと同様に、幻聴や妄想として表現されてくる、ということです。
『正体不明の声――対処するための10のエッセンス』
では、統合失調症の人が幻覚妄想状態に陥りやすいリスク状況として
以下の4つを挙げています。
不安、不眠、孤立、過労
なので人を避けすぎて孤立したり、勉強や部活などで過労になったり
睡眠不足が続くような状況は、危険信号です。
幻聴をはじめとする幻覚や、そこから派生する妄想が強まったときには、
最近「不安、不眠、孤立、過労」をきたすような生活パターンに
なっていないかを振り返り、できるだけ早く改善する必要があります。
ただし、対人関係を上達させるには、実際に多くの対人関係を
経験しなければなりません。
ここが分子整合栄養療法においても課題で、
長年引きこもっていた統合失調症の人が栄養療法で症状が
ほとんどなくなったとしても、
それだけでは社会復帰はおぼつかないのです。
統合失調症の多くは10~20代の若者世代で発症します。
この時期は心も身体も急速な成長をとげ、また親の保護下で学生生活を
していた立場から、自分で責任をとり、生活費を稼ぐ社会人へ、
という大きな切り替え時期です。
本来はこの時期にはクラスメイトや友人たちと喧嘩したり仲直りしたり、
誤解したりされたり、友情や恋愛に思い悩むなかから
精神的に成長していきます。
しかし統合失調症の幻覚妄想のせいでいっさいの現実的な人間関係や
社会的役割から離れたまま長年過ごすと、
年齢は重ねたがそれに見合った人生経験もなく、そのため
どんな場面でどう振る舞えば良いかの判断もつかず、
学校や会社などの集団に戻っても周りになじめず
ドロップアウトしてしまいがちなのです。
このために、昔から統合失調症の患者さんたち向けの
「デイケア」や、「SST(ソーシャルスキルトレーニング)」という
社会復帰プログラムが用意されています。
もしもあなたやあなたのご家族が統合失調症で、ある程度
症状コントロール可能にはなったが引きこもったまま、という場合には、
ぜひ上記のプログラムを検索するか、
地域の保健所や最寄りのメンタルクリニックで
そうした活動をしていないかを問い合わせ、
できるだけ早く参加されることをおすすめします。
以下の記事も参考にしてください。
<関連記事>
「ただ対人刺激を避けていては社会復帰できない理由と対策」
<参考図書>
不安障害圏の人の幻覚
不安障害ーーすなわち漠然とした不安、特定の状況(閉鎖空間や人前に出ること、高所や不潔、対人関係e.t.c.)への不安などが非常に強まった結果、
一見精神病のような、幻覚を生じる場合があります。
統合失調症の幻覚のほとんどが幻聴なのに対し、
不安障害圏の人の幻覚は幻視がメインになることが多いようです。
そして「後ろにだれかいて、自分を見ている」とか
「カーテンの陰から自分を観察している」
といった体験をして、怖がる人もいます。
中には幽体離脱(自分が身体を抜けて上から見下ろしているとか、
身体を離れて遠方に飛んでいく)のような体験をしたり、
自分が見ている物体(例:マグカップ)に自分が入り込み、その物体の
視点から自分を見つめ返している、といった体験をする人もいます。
またそこまで劇的でなくても
「自分が自分でないような感じ」とか
「自分と周囲の現実の間に膜がかかったみたいになり、現実感が薄れている」
と訴える方もおられます。
「多重人格」になる人がいるわけ
これが著しくなると「別人格」が現れて、普段の「本人格」とは全然別の
言動をし、しかも本人格はそれを忘れているので
周囲の人に後で指摘されて驚き、不安になる、ということもあります。
これがいわゆる「多重人格」といわれるものです。
こうした諸症状が起きる背景には、その人が本音で生きることを
長年抑え込んでいて苦しくなる、という状況があります。
例えば嫌いなタイプの人と無理に合わせてつきあっていたり、
仕事やプライベートで、本音では絶対にやりたくないようなことを
断れず、いやいや続けている場合です。
その結果として自己肯定感が低下し、現状の自分の人生に
満たされない思いが強まっていきます。
がまんし、フタをしていた本音がたまりにたまり、ついには抑えきれなくなったころに爆発したり、体調不良を起こして活動できなくなる人は多いですが、
その代わりに(無意識レベルで)自分の心を分割し、
「悪い子」の部分は切り離すことで、それまでの「良い子」という
自己イメージを維持しようとするのわけです。
このため、「別人格」は以下の特性を持っている場合が多いです。
・本音をズバズバ発言し、周りに配慮しない
・汚い言葉や性的な発言も平気でする
・暴力的
・性的に奔放になる(不特定多数の人と性行為するなど)
・お金にルーズになる(浪費やギャンブルなど)
ある人の場合は、普段は従順な会社員だったのですが
ある日、いきなり激昂し上司をなぐり倒してしまい、
しかも本人はそのことを全く覚えていなかったため、
精神科初診となりました。
つまり「本人格」が到底自分に許せないような言動を、
自分とは別の人格が実行したのだということにし、
しかも「本人格」はそのことを忘れることで
「私は感知していない、したがって責任もない」
という立ち位置にもっていくわけです。
もちろんこれらは全て無意識のうちに行われるため、
周りが本人を責めても「治す」ことはできません。
それよりも治療法としては、別人格を作らねばならないほどに
普段、抑圧している自分の本音に向き合い、本当はどうしたいのかを探り、
そこに近づけていくために、毎日の生活でどうしたら少しずつでも
もっと本音を出していけるかを考えることです。
当初は1人では難しいでしょうから、心理カウンセラーの助言を受けながら、ということになるでしょう。
本音を出すためには、本音を伝える際の、
相手への伝え方に工夫する必要があります。
長年本音を抑圧してきた人は、相手に伝え慣れていないので、
伝えようとするといきなり極端な表現をして相手の気持ちを傷つけたり、
感情を爆発させてしまったりします。
これでは相手もムッとして反撃したり、自己防衛的になり、
話をまともに聞いてくれなくなるでしょう。
それでは逆効果なので、相手にどういうタイミングで
どんな言い回し、話の順番、内容で伝えれば良いのかを
予めじっくりとシナリオを練り、何度も練習してから臨む必要があります。
そしてその結果、上手くいったか、そうでなかったかを
シナリオを書いたノートに書き込み、改善していきます。
そして改善したシナリオで再トライ・・・といった、
日頃の訓練が必要です。
それは英会話を学んだり、楽器を弾けるようになるために
毎日練習するのと全く同じです。
以下の書籍も参考にしていただければと思います。
<参考図書>
(統合失調症の人用)
統合失調症に似て非なるものーースピリチュアル・エマージェンシー(SE)
スピリチュアル・エマージェンシー(SE)とは
数はとても少ないですが、
症状だけ聞くと一見、統合失調症だが、中身は全く違うという、
「スピリチュアル・エマージェンシー(以下SE)」
とトランスパーソナル心理学で呼ばれている病態があります。
これはインドのヒンドゥー教では昔から「クンダリーニの覚醒」、
日本でも18世紀の禅僧が陥った心身の危機状況が「禅病」という用語で伝えられてきましたが、それらの状態と大部分重なると考えられています。
その症状は多彩ですが、身体症状としては
・全身がほてる、焼けるように熱い、頭がのぼせる
・下肢が氷のように冷たく、痛い
・全身の痛みや違和感、耳鳴り、発汗、涙が止まらない
・身体の不随意な(つまり意思とは無関係な)様々な動きが止まらない、
けいれん
など、その多くが自律神経の著しい乱れによると考えられるものです。
そして精神症状としては
・強度の不安・恐怖感、思考力低下、不眠
・精神が消耗したような感じ
・寝ても覚めても幻覚が見える(幻聴のこともある)
・個人としての境界が消え、周り(他人、自然、宇宙全体)との一体感を経験
・体外離脱体験、チャネリング(霊媒的体験)、テレパシー、予知能力
といった、いわゆる超能力的体験
などが知られています。
SEは合宿形式のスピリチュアル修行所で瞑想や修行(特に肉体を追い込むような過酷なもの)をやり過ぎた場合に起こりやすいといわれていますが、
それまでスピリチュアルや瞑想など全く興味がなかった個人が
重病や、精神的に非常に大きなストレスを体験中あるいはそれに引き続いて起きる場合もあります。
一方で、これというきっかけもなく突然発症する場合も皆無ではありません。
最近では、占い師やスピリチュアル・カウンセラーなどとして
自身の潜在意識を普段から使っていた人が、心身の負荷が特に強まった時期に
発症した、という事例も聞きます。
統合失調症と誤診される
いずれにしても、こうした病態があることを知らないと
本人はもちろん、家族が心配して精神科や心療内科を受診する、という流れになるでしょう。
しかし精神科医の99.9%はSEを知らないので、こうした心身の異常、特に幻覚妄想的な症状を訴える人を診ればただちに「統合失調症」と診断され、
抗精神病薬と呼ばれる、幻覚妄想を改善するための薬が投与されます。
確かにこれらの薬によって、それまで数日から数ヶ月もまともに眠れない、
食べられない、恐怖でおののいている状態からは、とりあえず脱することは
できます。
何しろ、SEだろうと統合失調症だろうと、異常体験が続くと興奮しっぱなしになり、そのせいでまともに眠れない、食べられない、恐怖と身体の不快感で居ても立っても居られないという状態になるので、
それらを、薬の強力な鎮静作用でとりあえず抑え込み、
リセットすることは必要なプロセスだからです。
SEと統合失調症では、その後の経過が異なる
しかし薬で鎮静する期間が長くなりすぎると、本人はただただだるく、眠く、
何も考えられず、睡眠時間以外もぼーっとして過ごすだけになってしまいます。
SEと統合失調症を鑑別しなければならない理由は、
統合失調症は薬物療法を含めて(がっつり分子整合栄養療法を行った場合には断薬できる例もごく少数ありますが)きちんと早期治療介入する必要があり、しかも自然治癒はないので、基本的に生涯にわたり医療的サポートが必要だからです。
それに対しSEは「健常人の一時的な病的反応だが、乗り越えればSE発症前よりも人格が成長し、自身や周囲の人たちに対する愛や寛容性が増し、
より充実した人生を送りやすくなる。
つまり医療の介入は一時的なもので良い」のです。
統合失調症は脳の生まれつきの性質により、ストレスで幻覚妄想と、そこから慢性的な意欲低下、人嫌いが強まり、引きこもろうとします。
早期にきちんと治療しないとその先の何十年という人生を自宅にこもったままとなり、社会参加ができない状態で終わってしまう可能性が高いです。
統合失調症への、薬物療法を含む標準的な治療法については、一般に出版されている書籍で学んでいただけますし、分子整合栄養療法の取り入れ方と効果については、この記事の少し前の部分にも書いたとおりです。
なのでここから先は、SEへの対処法について解説します。
SEへの対処法
前述したようにSEにおいても心身が激しく消耗している状態なので、
まずはゆっくり身体を休めることができる環境に入ることが重要です。
そうしたレトリート(休養できる宿泊施設)があればベストなのですが、
ほとんどないので、とにかく1人になれる空間があり、
しかし不安なときにはそれを話したり、気を紛らわせる手段があることが重要です。
この意味で、例えば家族や親友たちと一緒に自然の中にある温泉宿にしばらく宿泊したりするのは、良い選択肢でしょう。
また瞑想やチャネリングのしすぎ、修行のしすぎで神経が消耗しているので
瞑想などはしばらく休み、心身をリラックスさせ、たっぷり眠るようにします。
食事も菜食主義だと身体にエネルギーがなかなか回復しないので、
肉・魚・卵といった動物性タンパク質を多く摂ることが望ましいです。
肉体よりも精神を酷使しすぎた場合が多いので、入浴やサウナ、マッサージやストレッチ、海水浴やハイキングなど自然のなかで軽く身体を動かしながら過ごす、精油(エッセンシャルオイル)をかいだり、身体に塗って嗅覚と触覚を刺激する、ガーデニングや農作業をする、といった、適度に身体を刺激することで自律神経をととのえることが治療的に作用します。
先ほど、ほとんどの精神科医はSEを知らないので、SEの人が症状を伝えた途端、統合失調症の診断と治療を開始されてしまう、とお伝えしましたが、
だからといって、本人やその家族が精神科・心療内科を受診することを
あまりためらわないほうが良いです。
それは先に述べたように、SEの人にとっても、少なくとも強度の不眠が続く
ような時期には薬はとりあえず役立つから・・・ということもありますが、
実はもう1つ理由があります。
99%はやっぱり統合失調症
それは、幻覚妄想状態で統合失調症が疑われる人のほとんどは、
本当に統合失調症だからです。
たとえSEを知っている精神科医にかかっても、
真のSEと判定されるであろう人はごくわずかです。
私は精神科医になって約30年ですが、その間に
「SEだろう、またはSEの可能性がある」と感じた人は、ほんの2~3人です。
それらの人たちも幸い、程度が比較的軽かったため、前述のような対処法を
アドバイスしたところ自分で対処し、2~3ヶ月で落ち着かれました。
仲間の心療内科医(スピリチュアル肯定派)から聞いた事例も2例ほどあり、
その2例とも一時的に精神科病院に入院し薬物療法も受けたそうですが、
症状が改善後は断薬し、もちろんその後入院も外来通院もなく
普通に社会人として自活できているそうです。
なのでこれまで体験したことのないような心身の異常な症状が数日から2週間続き、まともに眠れないなど消耗が激しい場合は、ためらわずに心療内科や
精神科に相談してみましょう。
どうしても診断や治療に納得できなければ、拒否できるのですから。
以下が関連記事です。
私のブログの中でも、特に人気の記事の1つです。
<関連記事>
スピリチュアル・エマージェンシー:それは精神病か、それとも魂の成長か
参考図書は以下です。
一般の方は『私を変えた「聖なる体験」』が、一番読みやすいでしょう。
<参考図書>
各改善法の詳細
記事の文字数が膨大になり、更新の度にエラーが出るようになってしまったため、後半はこちらに移しましたのでどうぞ。↓
※後半記事: その1<各改善法の詳細> 、その2<おすすめ情報源>
その3参考図書①<栄養療法>、その3参考図書②<精神医学・心理学>、その3参考図書③<スピリチュアル> 、その3参考図書④<その他>
ちなみに
※前半記事:前半記事その1、前半記事その2:セルフ・コントロール①、前半記事その2:セルフコントロール②
です。